84歳の男性。早期胃癌の治療のため入院中である。

現病歴:2か月前から上腹部痛を自覚し、改善がないため受診した。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小彎の早期胃癌と診断された。5日前に入院し、翌日に内視鏡的粘膜下層剝離術が行われたが、同日夜に 200 mL 程度の吐血があり、緊急で内視鏡的止血術が行われた。吐血した際には激しい咳を伴っていた。昨日から 38.7℃の発熱と呼吸困難とを自覚している

既往歴:60 歳時に胆囊摘出術。

生活歴:喫煙は 60 歳まで 10 本/日を 40 年間。飲酒歴はない。石綿などの粉塵吸入歴はない。

家族歴:父親が肺癌で死亡。母親が脳梗塞で死亡。

現症:意識は清明。身長 154 cm、体重 41 kg。体温 37.6 ℃。脈拍 96/分、整。 血圧 112/60 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 92 %(リザーバー付マスク6L/分 酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音に異常を認めないが、両側の胸部に coarse crackles を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 下腿に浮腫を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(±)、潜血(-)。血液所見:赤血球 378 万、Hb 11.4 g/dL、Ht 33 %、白血球 16,800(桿状核好中球 8 %、分葉核好中球 76 %、好酸球 3 %、単球 3 %、リンパ球 10 %)、血小板 33 万。血液生化学所見:総蛋白 6.1 g/dL、アルブミン 2.3 g/dL、総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 32 U/L、ALT 59 U/L、LD 363 U/L (基準 176〜353)、尿素窒素 15 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、血糖 169 mg/dL、HbA1c 6.0 % (基準 4.6〜6.2)、Na 135 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 99 mEq/L、脳性ナトリウム利尿ペプチド<BNP> 120 pg/mL(基準 18.4 以下)。免疫血清学所見:プロカルシトニン 0.20 ng/mL(基準 0.05 未満)、CRP 18 mg/dL。尿中レジオネラ抗原陰性、尿中肺炎球菌抗原陰性。動脈血ガス分析(リザーバー付マスク6L/分 酸素投与下):pH 7.45、PaCO2 35 Torr、PaO2 63 Torr、HCO3- 25 mEq/L。仰臥位のポータブル胸部エックス線写真及び胸部 CT の水平断像と冠状断像とを別に示す。


この患者にみられる所見はどれか。2つ選べ。

a. 両肺の浸潤影

b. 右下葉無気肺

c. 空洞形成

d. 縦隔気腫

e. 蜂巣肺

解答を見る

この患者に投与すべき薬剤はどれか。

a. 免疫グロブリン製剤

b. 活性化プロテイン C

c. サーファクタント

d. 免疫抑制薬

e. 抗菌薬

解答を見る

この患者にみられる可能性が高いのはどれか。

a. 肺胞気-動脈血酸素分圧較差<A-aDO2>の低下

b. 肺コンプライアンスの低下

c. 肺内シャントの減少

d. PaO2/FIO2 比の上昇

e. 気道抵抗の低下

解答を見る
問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)