56歳の男性。胸痛のため救急車で搬入された。

現病歴:起床時に胸痛を自覚した。10 分経過しても胸痛が改善しないため救急車を要請した。救急隊の到着時、冷汗が著明で、搬送中に悪心を訴えた。建築業で普段から重労働をしているが、今回のような胸痛が起こったことはない。

既往歴:高血圧と高血糖とを職場の健康診断で指摘されていたが、受診はしていない。常用薬はない。アレルギーの既往歴はない。

生活歴:妻と息子との3人暮らし。喫煙は 20 本/日を 36 年間。飲酒は週末に焼酎を2合程度。

家族歴:3歳年上の兄が 48 歳時に心筋梗塞で死亡。

現症:意識は清明。表情は苦悶様である。身長 165 cm、体重 84 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 120/分、整。血圧 160/96 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 97 %(鼻カニューラ3L/分 酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。肥満のため頸静脈は評価できない。心雑音を聴取しない。呼吸音は両側肺下部に coarse crackles を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白 1+、糖 2+。血液所見:赤血球 463 万、Hb 13.2 g/dL、Ht 40 %、白血球 12,000、血小板 28 万。血液生化学所見:総蛋白 6.0 g/dL、アルブミン 3.2 g/dL、尿素窒素 30 mg/dL、クレアチニン 1.5 mg/dL、血糖 230 mg/dL、Na 130 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L。心筋トロポニン T迅速検査陽性。12 誘導心電図で洞性頻脈と前胸部の広範な ST 上昇とを認める。


この患者の胸痛について、診断に有用な情報はどれか。

a. 左乳房付近の痛み

b. 飲水で増悪する痛み

c. 下顎へ放散する痛み

d. 吸気時に増悪する痛み

e. 衣類が触れた際の痛み

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救急室で血圧が 70/40 mmHg まで低下した。 このときみられる可能性が高い身体所見はどれか。

a. テタニー

b. 口唇の腫脹

c. 皮膚の紅潮

d. 下肢の紫斑

e. 四肢末梢の冷感

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)