問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
72 歳の女性。右手が使いにくいことを主訴に来院した。3年前から料理のときに右手で炒めものをかき混ぜづらく、歩行時に右足を引きずると感じていたが、症状の進行は自覚しなかった。半年前、物を持って平地を歩いているときに小走りになって転倒した。そのころから徐々に右足の引きずりが強くなっているように感じている。10 年前から便秘で5年前から嗅覚の低下を自覚している。3年前に夫と死別してから抑うつ傾向となり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>を服用している。半年前に娘と旅行をしたとき、睡眠中に寝言を言いながら手足をバタバタさせていたという。
表情は乏しいが、眼球運動は正常で眼振は認めない。右優位の筋強剛と無動を認めるが、振戦を認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候は認めない。ドパミントランスポーター SPECTを別に示す。
最も考えられるのはどれか。
a. Parkinson 病
b. 正常圧水頭症
c. 多系統萎縮症
d. 進行性核上性麻痺
e. 薬剤性 Parkinson 症候群
パーキンソニズムを呈する疾患を鑑別させる問題。
姿勢反射障害、抑うつ、嗅覚の低下、筋強直、REM睡眠関連障害、無動とパーキンソン病の典型的な症状を認める。
パーキンソン病では典型的とは言えないが、振戦の症状が無い場合もある。
SPECT検査では基底核のドパミン取り込み低下を認める。