問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
74 歳の女性。胸部不快感を主訴に救急車で搬入された。 2 週間前に夫が突然死したため、葬儀などで忙しくしていた。本日 10 時ごろ、弔問のお客さんの対応中に胸部不快感を自覚した。気分不快と悪心なども出現したため、救急要請を行い、当院に搬送となった。
意識は清明。脈拍 96/分、整。血圧 168/94 mmHg。呼吸数24/分。SpO₂ 98 %(リザーバー付マスク 10 L/分 酸素投与下)。心音に異常を認めない。両側の胸部に coarse crackles を聴取する。
血液生化学所見:AST 29 U/L、ALT 99 U/L、CK 184 U/L(基準 30~140)、 脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉952 pg/mL(基準 18.4 以下)。来院時の心電図を別に示す。心エコー検査で左室心尖部を中心とする無収縮領域と、左室基部の過収縮を認めた。緊急冠動脈造影検査を行ったが、冠動脈主幹部に有意な狭窄や閉塞を認めなかった。引き続き行った左室造影写真を別に示す。
最も考えられる疾患はどれか。
a. 急性心膜炎
b. 冠攣縮性狭心症
c. たこつぼ心筋症
d. 下壁急性心筋梗塞
e. 前壁陳旧性心筋梗塞
たこつぼ心筋症は、強い精神的または身体的ストレスの後に発症し、急性の胸痛または呼吸困難を引き起こす。
心エコー検査では、心尖部の拡張と基部の収縮(たこつぼの形をした心室)が特徴的。
BNPの上昇や心電図変化が見られることもあるが、冠動脈疾患の典型的な所見は見られない。