問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
67 歳の男性。臨床病期ⅠA 期の原発性肺腺癌の診断で、右肺葉切除術およびリンパ節郭清術を施行した。手術翌日の昼に食事を開始した。昼食 2 時間後から胸腔ドレーンの排液が急に増加し、夕食後、さらに排液が増え 2 L を超えたため、ドレーン排液のバッグを新しく交換した。胸腔ドレーンからの空気漏れは認めなかった。
体温 36.2 ℃。心拍数 64/分、 整。 血圧 104/60 mmHg。呼吸数 16/分。SpO₂ 97 %(room air)。同日夜の胸腔ドレーンの排液の写真を別に示す。
対応として適切なのはどれか。
a. 胸膜癒着術
b. 利尿薬投与
c. 中心静脈栄養
d. カテコラミン投与
e. ガンマグロブリン投与
白色の排液が食事後の増加が見られることから、乳び胸(胸腔内にリンパ液が漏出する状態)を考える。
乳び胸は、胸部手術後に胸腔内リンパ管が損傷しリンパ液が漏れ出ることで生じる。
食事後のリンパ液の流れが増えることを考慮すると、消化管をパスして栄養を提供する中心静脈栄養は乳び胸の管理に有効。これにより、リンパ管からの漏出を減少させることができる。