73歳の女性。意識障害のためかかりつけ医から紹介されて家人とともに受診した。

現病歴:25年前に C 型肝炎ウイルス感染を指摘された。6か月前に腹水貯留を指摘され、肝硬変と診断されてかかりつけ医で利尿薬を処方されていた。今朝から呼びかけに対する反応が鈍くなり徐々に傾眠状態になったため、かかりつけ医から紹介されて受診した。

既往歴:28歳の分娩時輸血歴あり。64 歳時に食道静脈瘤に対し内視鏡的治療。

生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。

家族歴:特記すべきことはない。

現症:傾眠状態だが呼びかけには開眼し、意思疎通は可能である。身長 161 cm、体重 59 kg。体温 36.1 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 104/80 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 95 %(room air)。眼瞼結膜は軽度貧血様であり、眼球結膜に軽度黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は膨隆しているが、圧痛と反跳痛とを認めない。腸雑音に異常を認めない。肝・脾を触知しない。直腸指診で黒色便や鮮血の付着を認めない。両上肢に固定姿勢保持困難(asterixis)を認める。両下腿­に浮腫を認める。

検査所見(3週間前のかかりつけ医受診時):血液所見:赤血球 368 万、Hb 11.8 g/dL、Ht 38 %、白血球 3,800、血小板 4.0 万、PT-INR 1.3(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 3.1 g/dL、総ビリルビン 1.8 mg/dL、AST 78 U/L、ALT 66 U/L、LD 277 U/L(基準 176〜353)、ALP 483 U/L (基準 115〜359)、γ-GTP 132 U/L(基準 8〜50)、血糖 98 mg/dL。


確認すべき症状として最も重要なのはどれか。

a. けいれん

b. 頭痛

c. 動悸

d. 腹痛

e. 便秘

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検査所見(来院時):血液所見:赤血球 356 万、Hb 9.7 g/dL、Ht 35 %、白血球 4,000、血小板 8.6 万、PT-INR 1.3(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 6.4 g/dL、アルブミン 3.0 g/dL、総ビリルビン 6.3 mg/dL、直接ビリルビン 2.1 mg/dL、AST 78 U/L、ALT 62 U/L、LD 303 U/L(基準 176〜353)、ALP 452 U/L (基準 115〜359)、γ-GTP 103 U/L (基準 8〜50)、アミラーゼ 95 U/L (基準 37〜160)、アンモニア 170 μg/dL(基準 18〜48)、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 5.9 mg/dL、血糖 98 mg/dL、総コレステロール 106 mg/dL、 トリグリセリド 90 mg/dL、Na 132 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 100 mEq/L、α-フェトプロテイン<AFP>468 ng/mL(基準 20 以下)。CRP 1.0 mg/dL。腹部超音波像と腹部造影 CTとを別に示す。

次に行うべき検査はどれか。


早期相


遅延相

a. FDG-PET

b. 腹腔動脈造影

c. 上部消化管内視鏡

d. 下部消化管内視鏡

e. 内視鏡的逆行性胆管膵管造影<ERCP>

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来院時の血液検査所見から現時点で肝腫瘤に対する治療適応はないと判断した。

その根拠として最も重要なのはどれか。

a. 血小板 8.6 万

b. PT-INR 1.3

c. アルブミン 3.0 g/dL

d. 総ビリルビン 6.3 mg/dL

e. α-フェトプロテイン<AFP> 468 ng/mL

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)