中年の女性。意識障害のため救急車で搬入された。
現病歴:ホテルの部屋で倒れているのを従業員が発見し、呼びかけに反応が乏しいため救急車を要請した。救急隊到着時にはけいれんしていたが、搬送開始直後に治まった。
既往歴:不明
生活歴:不明
家族歴:不明
現症:意識レベルは JCSⅡ-20。身長 160 cm、体重 50 kg。体温 38.6 ℃。心拍数 106/分、整。血圧 94/50 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 100 %(マスク5L/分 酸素投与下)。皮膚はやや乾燥。瞳孔径は両側 6.5 mm で、対光反射は両側やや緩慢。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥している。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音は減弱している。四肢に麻痺はなく、腱反射は正常。
検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)、沈渣に白血球を認めない。
血液所見:赤血球 450 万、Hb 13.9 g/dL、Ht 42 %、白血球 11,200、血小板 16 万、PT-INR 1.2(基準 0.9〜1.1 )。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.2 mg/dL、AST 46 U/L、ALT 32 U/L、CK 1,500 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 18 mg/dL、 クレアチニン 0.8 mg/dL、血糖 98 mg/dL、Na 141 mEq/L、K 4.5 mEq/L、Cl 102 mEq/L。動脈血ガス分析(マスク5L/分 酸素投与下):pH 7.35、PaCO2 28 Torr、PaO2 100 Torr、HCO3- 15 mEq/L。
心電図は洞調律で不整はないが、QRS幅が広がり QT 間隔の延長を認める。ST-T 変化を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比と肺野とに異常を認めない。頭部 CT に異常を認めない。
ホテルの部屋のごみ箱に錠剤の空包が多数捨ててあったとの情報が得られた。 最も可能性が高い薬物はどれか。
a. 麻薬
b. コリン作動薬
c. 三環系抗うつ薬
d. 交感神経作動薬
e. ベンゾジアゼピン系睡眠薬
大量内服による自殺企図の症例。QT延長より上記を考えやすい。
中毒物質の迅速簡易定性に用いられる検体はどれか。
a. 尿
b. 便
c. 胃液
d. 血液
e. 脳脊髄液
今後起こりうる合併症に対し最も重要なモニタリングはどれか。
a. 心電図
b. 持続脳波
c. 中心静脈圧
d. 観血的動脈圧
e. SpO2
QT延長からtorsades de pointes、さらに致死的な不整脈への移行の可能性あり。