76歳の男性。腹痛と下痢とを主訴に来院した。
現病歴:50 歳台から軟便傾向であり、ときに水様下痢となっていた。本日、早朝に下痢、腹痛が出現した。自宅近くの診療所を受診し、細胞外液の輸液を受けたが改善しないため、紹介されて受診した。血便や嘔吐はない。
既往歴:55 歳ごろに過敏性腸症候群と診断され、6か月間治療を受けたことがある。65 歳時から高血圧症と脂質異常症のため、自宅近くの診療所でスタチンとカルシウム拮抗薬とを処方されている。75 歳時から Alzheimer 型認知症のためドネペジル塩酸塩を処方されている。
家族歴:父親が胃癌。母親が脳卒中。
生活歴:商社に勤務し、48 歳から 60 歳まで東南アジア諸国に赴任していた。
現症:意識は清明。身長 173 cm、体重 66 kg。体温 37.1 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 120/60 mmHg。呼吸数 14/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は下腹部全体に圧痛があるが、反跳痛はない。肝・脾を触知しない。腸雑音は亢進している。
検査所見 : 尿所見:蛋白 1+、糖 (-)、ケトン体 3+、潜血 (-) 、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 497 万、Hb 14.9 g/dL、Ht 44 %、白血球 11,700 (好中球 77 %、好酸球 4%、単球 6%、リンパ球 13 %)、血小板 32 万。血液生化学所見:総蛋白 6.0 g/dL、アルブミン 3.3 g/dL、総ビリルビン 1.1 mg/dL、AST U/L、ALT 10 U/L、LD 156 U/L(基準 176〜353)、ALP 147 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 25 U/L(基準 8〜50)、尿素窒素 14 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、尿酸 5.9 mg/dL、血糖 101 mg/dL、HbA1c 5.4 %(基準 4.6〜6.2)、トリグリセリド 85 mg/dL、HDL コレステロール 54 mg/dL、LDL コレステロール 116 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 3.3 mEq/L、Cl 103 mEq/L。
便鏡検によって認めた微生物の写真を別に示す。
原因微生物はどれか。
a. 赤痢アメーバ
b. 病原性大腸菌
c. ランブル鞭毛虫
d. Clostridium difficile
e. Campylobacter jejunii
画像より明らかである。
追加して確認すべきなのはどれか。
a. 外傷歴
b. 虫刺痕
c. 抗菌薬服用歴
d. 同性との性的接触歴
e. ペット飼育の有無
糞口感染する。口と肛門を接触させる性行為を行う人がなりやすい。
入院後の経過:入院 20 日目に、財布がなくなったとしきりに訴えるようになった。看護師が貴重品ボックスに預かっていることを説明したが、記憶がないと話している。
この他に合併しやすい症状はどれか。
a. 滞続言語
b. 収集癖
c. 取り繕い
d. 立ち去り行動
e. レム睡眠行動障害
認知症患者の症例。