63歳の女性。腹部膨隆と尿失禁とを主訴に来院した。

現病歴:2年前から腹部膨満感を認めるようになった。次第に腹部膨隆が目立つようになり、食欲はあるが食事をとるのがつらく、時々尿失禁を認めるようになったため受診した。

既往歴:30歳時に子宮内膜症。

生活歴:幼少期に両親が離婚して母親と2人で暮らしていたが、母親が死亡したため3年前からは一人暮らし。

家族歴:父親は詳細不明。母親が肺炎のため85歳で死亡。

現症:意識は清明。身長157cm、体重55kg。体温36.5℃。脈拍84/分、整。血圧166/90mmHg。呼吸数18/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は著明に膨隆し、腫大した肝と腫瘤とを腹部全体に触知する。腸雑音に異常を認めない。四肢に異常を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体1+、潜血1+、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球406万、Hb 12.3g/dL、Ht 41%、白血球6,130、血小板22万。血液生化学所見:総蛋白7.8g/dL、アルブミン4.5g/dL、総ビリルビン0.4mg/dL、AST 18U/L、ALT 9U/L、LD 157U/L(基準176~353)、ALP 288U/L(基準115~359)、γ-GTP 44U/L(基準8~50)、アミラーゼ95U/L(基準37~160)、尿素窒素24mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、尿酸6.3mg/dL、血糖98mg/dL、総コレステロール195mg/dL、トリグリセリド152mg/dL、Na 140mEq/L、K 3.9mEq/L、Cl 103mEq/L。腹部単純CTの冠状断像を別に示す。


今後経過中に出現すると考えられる症候として可能性が最も高いのはどれか。

a. 浮腫

b. めまい

c. けいれん

d. 顔貌の異常

e. 血清特異的 IgE 検査

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この時点での対応として適切でないのはどれか。

a. 減塩

b. 降圧薬投与

c. 利尿薬投与

d. 肝嚢胞穿刺

e. 肝動脈塞栓術

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3か月後に発熱と腰背部痛とに加えて尿量が減少したため再度来院した。左腰背部に叩打痛を認め腎嚢胞の感染を疑った。

正しいのはどれか。

a. 尿培養検査が高率に陽性となる。

b. Gram陰性菌が原因である可能性が高い。

c. MRIは嚢胞感染の診断に特異度が高い。

d. 感染嚢胞ドレナージは有用性が低い。

e. 腎摘出術は禁忌である。

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)