問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
55歳の女性。飛び降りによる腹部外傷のため救急車で搬入された。1か月前に胃癌と診断され、ここ数日は絶望して気持ちが不安定になっていた。今朝、自宅マンションの8階から飛び降りて受傷した。大量の腹腔内出血があり救命のためには速やかな開腹止血術が必要である。ショック状態で患者の意識はなく、意思の表示はできない。患者本人は以前から癌に対する手術治療を拒否していたが、救急車で付き添って来た夫は開腹止血術や救命治療を希望している。
リスボン宣言に基づく対応はどれか。
a. 速やかに開腹止血術を行う。
b. 開腹止血術以外の方法で経過をみる。
c. 院内倫理委員会を開催するよう要請する。
d. 本人と配偶者との意見が異なるため、他の家族の意見を待つ。
e. 多職種カンファレンスで方針を決定するまで治療を行わない。
リスボン宣言に基づき…
患者が意識不明かその他の理由で意思を表明できない場合は、法律上の権限を有する代理人から、可能な限りインフォームド・コンセントを得なければならない。
法律上の権限を有する代理人がおらず、患者に対する医学的侵襲が緊急に必要とされる場合は、患者の同意があるものと推定する。ただし、その患者の事前の確固たる意思表示あるいは信念に基づいて、その状況における医学的侵襲に対し同意を拒絶することが明白かつ疑いのない場合を除く。
しかしながら、医師は自殺企図により意識を失っている患者の生命を救うよう常に努力すべきである。