52歳の女性。耳鳴りを主訴に夫に伴われて来院した。
現病歴:2か月前から毎晩就寝時に心臓の鼓動が耳や頭の中でドクドクと響くように感じ、次第に寝付けなくなった。耳鼻咽喉科を受診したところ「耳鏡検査や聴力検査に異常はないので様子をみるように」と説明された。その後も改善がみられないため脳神経外科を受診したが「診察で神経学的所見に異常はなく脳血管障害の可能性は低いので再診は必要ない」と説明された。循環器内科も受診したが「心電図の異常もないので心臓の病気は心配しなくてもよい」と説明された。症状が改善しないため総合診療科を受診した。
既往歴:48 歳から高血圧症で降圧薬を内服中。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父親が脳出血で死亡。
現症:意識は清明。身長 156 cm、体重 54 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 148/88 mmHg。呼吸数 12/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。対光反射は正常。口腔内と咽頭とに異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。頸動脈に雑音を聴取しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。
再び面接を行った。
医師 ①「あなたの症状についてご家族からもお話を伺えますか」
患者 「はい、後で待合室にいる主人から聞いていただければと思います」
医師 ②「あなたの症状についてご主人はどのように考えていると思いますか」
患者 「私の体調不良は気になっている様子です」
医師 ③「最初に耳鼻咽喉科を受診されたのですね」
患者 「はい、最初は耳のせいかと思っていました」
医師 ④「いろいろ診てもらった結果、耳鳴りの原因は何だと思いますか」
患者 「私は血圧が高く父も脳出血だったので、脳に異常がないか不安です」
医師 ⑤「しばらく様子をみてはどうかと思いますが、いかがですか」
患者 「やはり脳の異常が心配です」
現在の患者の解釈モデルを尋ねているのはどれか。
a. ①
b. ②
c. ③
d. ④
e. ⑤
解釈モデルというのは、その人が治療や検査などの医療行為をどのように理解しているかということである。
この患者への対応として適切なのはどれか。
a. 今後の検査は他院で相談するように伝える。
b. ひとまず帰宅して家族とよく相談するように伝える。
c. いつでも連絡がとれるよう医師個人の電話番号を伝える。
d. 不安が強いときは自ら精神科医に相談するように伝える。
e. 外来通院を継続しながら患者の意向を確認していくと伝える。
現状は特に問題ないので、経過観察が無難。