54歳の女性。持続する腰痛、胸郭変形および諸検査の異常のため来院した。2年前から腰痛があり、自宅近くの整形外科医院で非ステロイド性抗炎症薬を処方されていたが痛みは持続し、半年前から胸郭が変形し身長が 12 cm低くなった。最近、腰痛が増悪し、歯の痛みや全身のしびれ感も出現したために、血液検査とエックス線撮影が施行されたところ、骨折線を伴う著明な骨変形を含む多数の異常を指摘され紹介されて受診した。
身長 138 cm、体重 40 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 150/96 mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は湿潤しており、う歯を多数認める。表在リンパ節に腫大を認めない。胸郭は変形と陥凹が著明である。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。脳神経に異常を認めない。上肢の筋力は正常だが、体幹と下肢の筋力は痛みのために低下している。腱反射は下肢で減弱している。
血液所見:赤血球 412万、Hb 13.5 g/dL、白血球 5,800、血小板 22万。血液生化学所見:総蛋白 7.4 g/dL、アルブミン 4.5 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、AST 21 U/L、ALT 15 U/L、ALP 1,725 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 10 U/L(基準 8〜50)、尿素窒素 14 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、Na 144 mEq/L、K 4.7 mEq/L、Cl 109 mEq/L、Ca 8.7 mg/dL、P 0.9 mg/dL。CRP 0.1 mg/dL。
考えられるのはどれか。
a. 腫瘍性骨軟化症
b. 腎性骨異栄養症
c. 閉経後骨粗鬆症
d. 偽性副甲状腺機能低下症
e. 原発性副甲状腺機能亢進症
病的骨折の原因を探る問題。腫瘍性骨軟化症の症例。
腫瘍由来で産生されるFGF23(線維芽細胞増殖因子23)。
FGF23は腎臓における FGF受容体1と結合して、リン排泄を促す。一方、FGF23は、腎臓における活性型ビタミンDの合成を抑制する。
以上より骨軟化症となる。