49歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。
現病歴:2か月前から夕方の買い物中にボーッとなって近くの医療機関を受診し点滴を受けて帰宅することが3回あった。Holter 心電図で異常はなく、脳波検査と頭部 CT とを受けたが結果はまだ聞いていないという。本日夜、自宅で倒れているのを見つけた夫が救急要請し、総合病院の救急外来に搬入された。
既往歴(夫からの情報):特記すべきことはない。月経はよく分からない。持参していた特定健診(3週間前受診)のデータ:Hb 11.4 g/dL、白血球 3,100、血糖 68 mg/dL、Na 132 mEq/L。
生活歴:専業主婦。夫と人暮らし。大学生の子ども人とは別居。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:閉眼したままで呼びかけには反応しないが、痛み刺激には反応がある。身長 156 cm。体重は測定不能だが、夫によると「少し痩せてきたかなぁ」という。脈拍 76/分、整。血圧 102/56 mmHg。胸部や腹部に異常を認めない。手足は時折動かし、麻痺や弛緩は認めない。簡易測定した血糖値が 35 mg/dL であったので、20 % ブドウ糖液 20 mL を静注したところ、3分後には呼びかけに応じ座位が取れるようになった。経過観察と精査を目的に入院になった。
この患者から収集すべき情報として重要性が高いのはどれか。3つ選べ。
a. 月経歴
b. 海外渡航歴
c. 薬剤服用歴
d. 正確な体重歴
e. ペット飼育歴
低血糖による意識障害に必要な情報についての問題。
追加情報(本人の意識回復後に聴取した内容):2回の出産後、月経は正常に戻ったが最近は少し不順気味である。魚油系のサプリメントを服用しているが常用薬はない。2年に1度、家族で海外旅行に行っており、直近は1年前にアメリカ西海岸を訪れた。犬を10年以上室内で飼っている。体重はこの1年で5kg減って48kgである。
その後の経過:ブドウ糖液静注後、意識障害は改善し再度の悪化を認めなかったため、翌朝まで維持液 1,000 mL を輸液しながら経過観察することにした。翌朝の診察時、意識状態は再度悪化し意思疎通が取れなくなっていた。バイタルサインは 正常である。血液生化学所見:血糖 82 mg/dL、Na 112 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 78 mEq/L。CRP 0.3 mg/dL。動脈血ガス分析の結果は正常。緊急で行った頭部CTで異常を認めない。
この患者の意識障害の原因として疑わしいのはどれか。
a. 下垂体前葉機能低下症
b. サプリメントの大量摂取
c. 遷延性低血糖症
d. 粘液水腫性昏睡
e. 無菌性髄膜炎
下垂体前葉機能低下症の症例。
輸液を見直すとともに、行うべき対応はどれか。
a. 抗ウイルス薬を投与する。
b. サプリメントを中止させる。
c. 甲状腺ホルモンを投与する。
d. 20 % ブドウ糖液を静注する。
e. 副腎皮質ステロイドを投与する。
下垂体前葉機能低下症によりコルチゾールが低下している。ステロイド投与が必要。