問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
82歳の男性。疲労感を主訴に来院した。3か月前から顔面が蒼白であることを指摘され、息切れと疲労感を自覚するようになった。2か月前から味覚異常と手足のしびれとを感じていた。3週間前から疲労感が増悪するため受診した。20 年前に胃癌に対し胃全摘術を受けた。
身長 172 cm、体重 56 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 102/66 mmHg。呼吸数 18/分。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。上腹部正中に手術痕を認める。両側下腿に軽度の浮腫を認める。両下肢に末梢優位の感覚障害を認める。
血液所見:赤血球 162 万、Hb 6.2 g/dL、Ht 21 %、白血球 3,300、血小板 11 万。血液生化学所見:総蛋白 5.8 g/dL、アルブミン 2.8 g/dL、総ビリルビン 1.6 mg/dL、AST 24 U/L、ALT 32 U/L、LD 648 U/L (基準 176〜353)、尿素窒素 11 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、血糖 106 mg/dL。
まず投与すべきなのはどれか。
a. 鉄剤
b. 亜鉛製剤
c. ニコチン酸製剤
d. カルシウム製剤
e. ビタミン B12 製剤
胃全摘術の巨赤芽球性貧血。
胃の壁細胞からビタミンB12の吸収に必要な内因子が分泌されるわけでですが、胃全摘術後は内因子が分泌されないため、経口からのビタミンB12の吸収不良となる。
ビタミンB12の欠乏により、骨髄中の芽球が成熟できずに貧血となる。
治療としてビタミンの静脈注射や筋肉注射がある。