67歳の男性。突然の嚥下困難のため救急車で搬入された。
現病歴:本日、昼食中に突然、後頭部痛、めまい及び悪心を感じて嘔吐した。しばらく横になり様子をみていたが、帰宅した妻から声を掛けられ返答したところ、声がかすれて話しにくいことに気が付いた。水を飲もうとしたがむせて飲めなかった。心配した妻が救急車を要請した。
既往歴:40歳から高血圧症。
生活歴:妻と2人暮らし。喫煙は10本/日を45年間。飲酒は機会飲酒。
現症:意識は清明。身長 165 cm、体重 60 kg。体温 36.6 ℃。心拍数 72/分、整。血圧 160/90 mmHg。呼吸数 12/分。SpO2 97 % (マスク 4L/分酸素投与下)。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察では、眼球運動に制限はなく複視はないが、構音障害と嚥下障害を認める。左上下肢の温痛覚が低下している。腱反射に異常を認めず、Babinski 徴候は陰性である。
検査所見:血液所見:赤血球 452 万、Hb 13.1 g/dL、Ht 40 %、白血球 5,300、血小板 32 万。血液生化学所見:総蛋白 8.1 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、総ビリルビン 1.0 mg/dL、AST 15 U/L、ALT 18 U/L、LD 280 U/L (基準 176〜353)、ALP 213 U/L (基準 115〜359)、γ-GTP 18 U/L (基準 8〜50)、CK 50 U/L (基準 30〜140)、尿素窒素 20 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、尿酸 4.2 mg/dL、血糖 82 mg/dL、トリグリセリド 185 mg/dL、HDL コレステロール 40 mg/dL、LDLコレステロール 200 mg/dL、Na 145 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 104 mEq/L。CRP 0.2 mg/dL。頭部 MRI 拡散強調像を別に示す。
この患者でみられる可能性が高いのはどれか。
a. 左小脳性運動失調
b. 左顔面温痛覚低下
c. 右 Horner 症候群
d. 右上下肢運動麻痺
e. 右上下肢振動覚低下
頭部MRI(DWI)では右延髄に高信号が見られている。Wallenberg症候群の症例である。
交感神経下行路の障害により、ホルネル症候群となる。
異常所見を示す可能性が最も高い検査はどれか。
a. 脳波
b. 聴力検査
c. 視覚誘発電位
d. 眼球運動検査
e. 末梢神経伝導検査
多分 d眼球運動検査が正解と思われる。
Wallenberg 症候群に認められる眼球運動障害としては眼振が最も多い。
それを知っているか問う問題と思われる。
入院後に行った嚥下造影検査で、造影剤の気道内流入が認められた。 この時点の対応として適切なのはどれか。
a. 胃瘻造設
b. 失語症訓練
c. 経鼻経管栄養
d. 食道発声訓練
e. 高カロリー輸液
嚥下機能低下患者に対しての栄養管理についての問題。
a 胃瘻は食事摂取低下が長期となれば検討する。
b 失語と嚥下機能は関係ない。
c 正解
d 喉頭全摘出術等により発声できない患者への対応。
e 間違いではないと思うが、経口での自然な経路が推奨される。