76 歳の女性。胃癌の治療のため来院した。
現病歴 : 健康診断の上部消化管内視鏡検査と生検で胃癌と診断されたため治療の目的で受診した。同健康診断で血中 Helicobacter pylori 抗体陽性を指摘された。
既往歴 : 20 年前から高血圧症で自宅近くの診療所に通院中。
生活歴 : 夫と長女の家族と暮らしている。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴 : 父親が心筋梗塞。母親が胃癌。
現症 : 意識は清明。身長 157 cm、体重 48 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 132/86 mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見 : 血液所見:赤血球 418 万、Hb 12.7 g/dL、Ht 40 %、白血球 4,300、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 6.7 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 25 U/L、ALT 19 U/L、LD 193 U/L (基準 120〜245)、ALP 147 U/L(基準 115〜359)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 103 mEq/L。上部消化管内視鏡像を別に示す。
内視鏡治療の適応と診断し内視鏡的粘膜下層剝離術を行った。病理組織の H-E 染色標本を別に示す。 この患者の切除標本の病理組織像と考えられるのはどれか。
a. ①
b. ②
c. ③
d. ④
e. ⑤
① 扁平上皮癌
② GIST
③ 肝臓
④ 腺癌 正解
⑤ 膵臓
その後の経過:病理組織結果から治癒切除と診断し、上部消化管内視鏡検査で切除治療後の潰瘍の治癒を確認した。その後、Helicobacter pylori に対する除菌治療を行うことにした。医師と患者の会話を以下に示す。
医師:「①ピロリ菌の除菌治療のために NSAID と3種類の抗菌薬を処方します。②1日3回朝昼晩で、1か月間服用していただきます。今までにお薬のアレルギーはありませんか」
患者:「ありません」
医師:「副作用として下痢や皮疹がみられることがありますが、③副作用が出ても我慢して内服を続けてください」
患者:「わかりました」
医師:「④除菌が成功すると胃癌は発生しなくなりますが、⑤1〜2年に1度は胃の内視鏡検査を受けることをお勧めします」
患者:「わかりました」
医師:「除菌ができたかどうかは2か月後に検査をします」
下線部のうち適切なのはどれか。
a. ①
b. ②
c. ③
d. ④
e. ⑤
a 除菌はPPIと2種の抗菌薬を用いる。
b 1日2回を一週間。
c 副作用が出たらやめよう。禁忌の可能性。
d 発生しないわけではない。可能性は低くなる。
e 正解。
2か月後の除菌判定を行うのに適切なのはどれか。2つ選べ。
a. 培養法
b. 尿素呼気試験
c. 迅速ウレアーゼ試験
d. 血中 Helicobacter pylori 抗体測定
e. 便中 Helicobacter pylori 抗原測定
ピロリ菌感染のガイドライン2016年版では
「除菌判定には尿素呼気試験およびモノクローナル抗体を用いた便中H. pylori 抗原測定が有用であるが、複数の診断法を用いることにより厳密に除菌判定を行うことができる」
と記載されている。