58 歳の男性。早朝に出現する胸痛の精査のため入院となった。約 6 か月前から労作とは関連なく、早朝に出現することが多い前胸部痛を自覚するようになった。胸痛発作時に、自宅近くの診療所で処方されたニトログリセリンの使用で症状が軽快した。喫煙は 20 本/日を 38 年間。飲酒はビール 500 mL/日。
意識は清明。身長170 cm、 体重 83 kg。 脈拍 80/分、 整。 血圧 138/90 mmHg。SpO₂ 98 %(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
尿所見: 蛋白(-)、 糖(-)。 血液所見: 赤血球 440 万、Hb 16.0 g/dL、Ht 48 %、 白血球 7,800、 血小板 19 万。 血液生化学所見: 総蛋白 7.5 g/dL、AST 30 U/L、ALT 33 U/L、LD 250 U/L(基準 120~245)、CK 180 U/L(基準 30~140)、 尿素窒素 18 mg/dL、 クレアチニン 0.8 mg/dL、HDL コレステロール50 mg/dL、LDL コレステロール 150 mg/dL。心筋トロポニン T 迅速検査陰性。12 誘導心電図と胸部エックス線写真に異常を認めなかった。冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄を認めなかったため、引き続き、予防的な一時的ペースメーカーを心腔内に留置した後、アセチルコリンを左冠動脈に注入したところ、心電図の胸部誘導に ST 上昇が出現し、胸痛を訴えた。このときの冠動脈造影像を別に示す。ニトログリセリンを左冠動脈に注入したところ、胸部症状は消失し、心電図も正常化した。このときの冠動脈造影像を別に示す。
この患者への指導で適切でないのはどれか。
アセチルコリン冠動脈注入後
ニトログリセリン冠動脈注入後
a. 禁煙
b. 節酒
c. β 遮断薬の服薬
d. 精神的ストレスの回避
e. カルシウム拮抗薬の服薬
冠攣縮性狭心症の症例。
β遮断薬は、多くの狭心症や高血圧の治療において有用。しかし、冠攣縮性狭心症の場合、β遮断薬は冠動脈痙攣を悪化させる可能性がある。
β遮断薬は、交感神経を抑制し心筋の酸素需要を減少させるが、同時にβ2遮断することで冠動脈の痙攣を引き起こすリスクが高まる。