最も疑われる疾患はどれか。
a. 緊張性気胸
b. 急性心筋梗塞
c. 胸椎圧迫骨折
d. 急性大動脈解離
e. 急性僧帽弁閉鎖不全症
この患者の症状と所見から最も疑われる疾患は「d. 急性大動脈解離」である。
以下に理由を説明する:
1. **突然の胸背部痛**:急性大動脈解離は突然の激しい胸背部痛が典型的な症状である。
2. **血圧の違い**:上肢と下肢の血圧に差がある(上肢血圧 102/70 mmHg、下肢血圧 114/60 mmHg)。これは大動脈解離に伴う症状としてよく見られる。
3. **拡張期雑音**:胸骨左縁第3肋間に拡張期雑音が聴取される。これは大動脈解離による大動脈弁の逆流を示唆している可能性がある。
4. **血液検査**:炎症反応の上昇(CRP 6.8 mg/dL)や肝機能障害(AST 98 U/L、ALT 134 U/L)も大動脈解離に関連する可能性がある。
他の選択肢について:
- **a. 緊張性気胸**:胸背部痛はあるが、呼吸音に左右差がないことや呼吸状態が安定していることから、可能性は低い。
- **b. 急性心筋梗塞**:胸痛と心筋梗塞の可能性もあるが、心電図所見や典型的な胸痛の放散がないため、可能性は低い。また、心筋酵素(CK)は正常範囲内である。
- **c. 胸椎圧迫骨折**:骨折に伴う痛みも考えられるが、患者の主訴や他の所見から、急性大動脈解離の可能性が高い。
- **e. 急性僧帽弁閉鎖不全症**:胸背部痛は典型的ではなく、拡張期雑音も僧帽弁閉鎖不全症に一致しない。
以上の理由から、最も疑われる疾患は「d. 急性大動脈解離」である。
諸検査の後、痛みはやや改善したが疲労感は続いている。
胸部単純 CT 終了後、 心拍数 108/分、整。血圧 92/62 mmHg。SpO₂ 98 %(room air)。
次に行うべき対応で適切なのはどれか。
a. 経過観察
b. 緊急手術
c. 胸腔ドレナージ
d. 心臓カテーテル検査
e. 大動脈内バルーンパンピング〈IABP〉挿入
この患者の症状、身体所見、そして検査所見から最も疑われる疾患は急性大動脈解離です。急性大動脈解離は、突然の胸背部痛、血圧の左右差、拡張期雑音などの特徴的な症状を伴います。胸部CTでの所見も考慮する必要がありますが、急性大動脈解離が強く疑われる場合、緊急対応が必要です。
次に行うべき対応で適切なのは「b. 緊急手術」です。
理由は以下の通りです:
1. **急性大動脈解離**は、早期に治療しなければ命に関わる緊急疾患です。
2. **拡張期雑音**は、大動脈弁の逆流を示唆しており、これは急性大動脈解離の一部に関連している可能性があります。
3. **血圧の変動**(初診時の血圧 102/70 mmHgが92/62 mmHgに低下)は、大動脈解離に伴う循環不全の可能性を示しています。
他の選択肢について:
- **a. 経過観察**:急性大動脈解離が疑われる場合、経過観察は適切ではなく、迅速な治療が必要です。
- **c. 胸腔ドレナージ**:胸腔ドレナージは気胸や血胸などの治療に用いられますが、急性大動脈解離には適用されません。
- **d. 心臓カテーテル検査**:心臓カテーテル検査は急性冠症候群の評価には有用ですが、急性大動脈解離の疑いが強い場合、まずは外科的治療が優先されます。
- **e. 大動脈内バルーンパンピング(IABP)挿入**:IABPは心原性ショックなどの治療に用いられますが、急性大動脈解離に対しては禁忌です。
したがって、急性大動脈解離が疑われるこの患者に対して最も適切な対応は「b. 緊急手術」です。