9 歳の男児。腹痛のため救急車で搬入された。 2 日前から嘔吐が出現し、徐々に嘔吐が頻回となり間欠的腹痛が出現した。体温 36.8 ℃。心拍数 120/分、整。血圧 116/66 mmHg。呼吸数 24/分。SpO₂ 98 %(room air)。腹部は軽度膨満し、軟で腸雑音は減弱していた。右側腹部に腫瘤を触知し、右上腹部に圧痛を認めた。腹部超音波検査で腹部正中に target sign を認めた。空気による非観血的整復術にて還納した。その後行った ⁹⁹ᵐTcO₄¯ シンチグラムを別に示す。
診断はどれか。
a. Crohn 病
b. Meckel 憩室
c. 悪性リンパ腫
d. 腸回転異常症
e. 大腸ポリポーシス
この9歳男児は、嘔吐と間欠的腹痛を主訴に搬入され、腹部超音波検査で「target sign(標的像)」が認められています。これは、**腸重積**を示す典型的な超音波所見です。また、「空気による非観血的整復術にて還納した」という記載は、腸重積が還納されたことを示しています。腸重積は、通常、1歳から3歳までの幼児に多く見られますが、年齢が少し上がった子どもにも発症することがあります。
さらに、99mTcO₄¯シンチグラムは**Meckel憩室**を診断するために使用されることが多く、99mTcO₄¯は胃粘膜に集積するため、Meckel憩室の存在を確認することができます。この症例では、シンチグラムが行われていることから、Meckel憩室が関与している可能性が高いです。Meckel憩室は、腸重積の原因となることもあります。
したがって、この患者の診断は **b. Meckel憩室** です。
他の選択肢について:
- **a. Crohn病**:炎症性腸疾患で、target signや腸重積は典型的な所見ではありません。
- **c. 悪性リンパ腫**:リンパ腫による腫瘤は可能性として考慮されますが、target signや空気による整復で改善したという経過はリンパ腫に典型的ではありません。
- **d. 腸回転異常症**:腸回転異常症も嘔吐や腹痛を引き起こしますが、target signは見られません。
- **e. 大腸ポリポーシス**:ポリポーシスは多発する大腸ポリープが特徴であり、target signや腸重積とは関係ありません。
以上より、正しい診断は **b. Meckel憩室** です。