A さん(50 歳、男性、会社員)は半年ほど前から労作時に胸痛と呼吸困難感があり、狭心症と診断され内服治療を受けている。本日明け方から胸部に圧迫感があった。出勤途中に強い胸痛を自覚し、自ら救急車を要請した。救急外来到着時のバイタルサインは、体温 35.8 ℃、呼吸数 30/分、脈拍 112/分、血圧 96/52 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO₂>93 %(酸素L/分)。意識は清明。12 誘導心電図は V₁〜V₄ で ST上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVF で ST 低下がみられた。
救急外来到着時に A さんの状態をアセスメントするために優先度が高い血液検査項目はどれか。
1. トロポニン T
2. 乳酸脱水素酵素
3. 血清クレアチニン
4. アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
トロポニン T は心筋梗塞を診断するための重要なバイオマーカーです。A さんは胸痛を自覚し、心電図でSTセグメントの異常が確認されています。これらの症状と心電図の所見は、急性冠症候群(特に心筋梗塞)の可能性を示唆しており、トロポニン T の測定は急性心筋損傷の有無を判断するのに非常に役立ちます。
心臓カテーテル検査の結果、A さんは急性心筋梗塞と診断された。心係数 2.4L/分/m²、肺動脈楔入圧 20 mmHg で Forrester<フォレスター>分類Ⅱ群であった。
身体所見:両側下肺野で呼吸音が減弱しており、軽度の粗い断続性副雑音が聴取される。
心エコー検査:左室駆出率<LVEF>58 %
胸部エックス線検査:心胸郭比<CTR>48 %
このときの A さんのアセスメントで適切なのはどれか。
1. 心拡大が認められる。
2. 肺うっ血が起きている。
3. 末梢循環不全が起きている。
4. 左心室の収縮力が低下している。
この選択肢が最も適切です。Aさんは肺動脈楔入圧が20 mmHgであり、これは正常値よりも高く、肺うっ血を示唆しています。さらに、身体所見において両側下肺野で呼吸音の減弱と粗い断続性副雑音が聴取されることから、肺うっ血が起きていることが確認できます。これらの所見は心不全による肺への液体貯留を示しています。
その後、A さんは経皮的冠動脈形成術<PCI>を受けた。帰室時のバイタルサインは、体温 36.2 ℃、呼吸数 20/分、脈拍 58/分、整、血圧 80/40 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO₂>95 %(酸素1L/分)。顔面は蒼白、冷汗を認めた。意識は清明である。
このとき看護師が最初に行うことはどれか。
1. 側臥位にする。
2. 除細動器の準備を行う。
3. 穿刺部の出血の有無を確認する。
4. 鎮痛薬の処方を医師に相談する。
Aさんは経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた後、血圧が低下しています(80/40 mmHg)、顔面蒼白と冷汗を認めます。これらは出血やショックの可能性を示唆しています。PCI後の患者では、穿刺部からの出血や血腫の形成が重要な合併症であり、早期に対処する必要があります。このため、穿刺部の出血や異常がないかを確認することが最優先されます。