84 歳の女性。失神と眼前暗黒感とを主訴に来院した。
現病歴:1週間前から時々気が遠くなるようなふらつきを自覚していたが、本日、朝食前に突然眼前暗黒感を自覚し意識が消失した。意識はすぐに回復したが、心配になり長女に付き添われて救急外来を受診した。
既往歴:60 歳ごろから高血圧症と脂質異常症。75 歳ごろから骨粗鬆症と逆流性食道炎。80 歳ごろから心不全と心房細動で内服治療中。アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、スタチン<HMG-CoA 還元酵素阻害薬>、ビスホスホネート製剤、プロトンポンプ阻害薬およびジゴキシンを処方されている。
生活歴:ADL は自立している。長女夫婦と3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴:父親が心筋梗塞で死亡。母親が胃癌で死亡。
現症:意識は清明。身長 150 cm、体重 42 kg。体温 35.8 ℃。脈拍 36/分、不整。血圧 152/70 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心尖部を最強点とするⅡ/Ⅵの汎収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(±)、糖(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 352 万、Hb 11.8 g/dL、Ht 36 %、白血球 5,800、血小板 16 万。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、AST 28 U/L、ALT 32 U/L、ALP 164 U/L(基準 115〜359)、CK 45 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 24 mg/dL、クレアチニン 1.4 mg/dL、血糖 110 mg/dL、HbA1c 5.7 % (基準 4.6〜6.2)、Na 133 mEq/L、K 3.6 mEq/L、Cl 97 mEq/L。CRP 0.3 mg/dL。
まず行うべきなのはどれか。
a. 脳波
b. 心電図
c. 頭部 MRI
d. 胸部造影 CT
e. ヘッドアップティルト試験
中止すべき薬剤はどれか。
a. スタチン<HMG-CoA 還元酵素阻害薬>
b. アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
c. ビスホスホネート製剤
d. プロトンポンプ阻害薬
e. ジゴキシン
ジゴキシン中毒による不整脈→めまい、失神。
ジギタリスには陽性変力と陰性変時はあるので徐脈になったのでしょう。
薬剤を中止したところ状態は改善した。 今回の経過に関連したのはどれか。
a. 薬物相互作用
b. 薬物排泄の低下
c. 薬物代謝の低下
d. 薬物吸収の低下
e. 服薬アドヒアランスの低下
高齢による腎機能の低下が原因です。
ジギタリスは腎排泄。
昔はレートコントロール頻用されていたが、最近はβ遮断薬に取って代わられた。使用頻度が減ったが、必要な時は必要な薬。
必要な場面は、急性心不全時の頻脈性心房細動でのレートコントロール。β遮断薬では血圧低下・ショックの危険性があるため使えないです。
高齢者や腎機能低下患者では慎重に使いましょう。