77 歳の男性。全身倦怠感と物忘れを主訴に来院した。
現病歴 : 高血圧症で内服加療中。半年前から食後の全身倦怠感が出現した。またほぼ同時期からときどき物を置いた場所がわからなくなるようになった。その後も症状は持続し、不安、不眠および食欲低下が出現し、3か月で2kg の体重減少があった。立ち上がり時や歩行時にふらつきの自覚はなかったという。
既往歴 : 30 歳時に虫垂炎で虫垂切除術。
生活歴 : 妻と2人暮らし。65 歳で退職。日常生活は自立しているが、症状出現後は外出機会が減少した。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。几帳面な性格である。2か月前に運転免許証を自主返納した。
家族歴 : 特記すべきことはない。
現症 : 意識は清明。身長 165 cm、体重 58 kg。体温 36.0 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 126/66 mmHg。SpO₂ 97 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察で下肢筋力低下を認める。
検査所見 : 尿所見:蛋白(-)、潜血(-) 。血液所見:赤血球 413 万、Hb 13.3g/dL、Ht 38 %、白血球 4,500、血小板 22 万。血液生化学所見:総蛋白 6.3 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、AST 20 U/L、ALT 18 U/L、CK 53 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、空腹時血糖 94 mg/dL、HbA1c 5.8% (基準 4.6〜6.2)、Na 140 mEq/L、 K 4.1 mEq/L、Cl 105 mEq/L、TSH 1.56μU/mL (基準 0.2〜4.0)、FT3 2.3 pg/mL (基準 2.3〜4.3)、FT4 1.3 ng/dL (基準0.8〜2.2)。CRP 0.04 mg/dL。頭部 MRI で軽度の脳萎縮と両側大脳半球白質や視床に軽微な慢性虚血性変化を認める。脳の主幹動脈に有意狭窄や動脈瘤を認めない。
食後の全身倦怠感を説明し得るのはどれか。
a. 食後 60 分の血圧低下
b. 食後 60 分の血糖値上昇
c. 6分間歩行での SpO₂ の低下
d. 吸気時の収縮期血圧 10 mmHg 以上の低下
e. 仰臥位から起立した際の心拍数 20/分以上の上昇
高齢者総合機能評価<CGA>を行うことにした。認知機能評価に用いる検査はどれか。
a. やる気スコア<Apathy Scale>
b. Barthel Index
c. Geriatric Depression Scale
d. Mini-Mental State Examination<MMSE>
e. Vitality Index
MMSEは長谷川式認知症スケール(HDS-R)とともに認知症スクリーニング検査として広く用いられている。
追加検査で抑うつ傾向と四肢筋量と骨量の低下が認められた。この患者に対する適切な対応はどれか。2つ選べ。
a. 運動指導を行う。
b. 自宅安静を指示する。
c. 精神科医師にコンサルテーションする。
d. ベンゾジアゼピン系薬剤の投与を開始する。
e. 器質的な疾患がないことを説明し、かかりつけ医に逆紹介する。
サルコペニア + 抑うつ の高齢者に対してのマネジメント。
a 運動は正解。
b 安静とすると筋力低下となる。だめです。
c うつを認めるので精神科コンサルト必要。
d ベンゾジアゼピンは安易に出してはいけない。だめです。
e いきなり逆紹介はだめです。