37歳の女性。全身倦怠感と頭痛を主訴に来院した。
現病歴: 半年前から倦怠感を自覚していた。3か月前から頭痛も出現するようになった。1か月前からは起きた時にも強い全身倦怠感があるため、仕事を休むようになった。頭痛の程度は軽いが、2か月前に脇から出てくる自転車に気付かずに接触し、転倒したことがあった。
さらに情報を集めるとき、システムレビューに相当する質問はどれか。
a. 「血の繋がった方で、何かご病気をされた方はいますか」
b. 「ご自分ではどのような病気を心配されていますか」
c. 「これまでに大きな病気をしたことはありますか」
d. 「頭痛はどのような痛みですか」
e. 「食欲や睡眠はいかがですか」
システムレビューは包括的な問診のこと。
さらに医療面接と診察を進めた。
現病歴: 頭痛は眼の奥が重く痛むようなものである。3か月前から無月経になっている。食欲も落ちており、体重は半年で3kg低下している。癌なのではないかと心配している。睡眠障害はない。3か月前から便秘が悪化している。
既往歴: 特記すべきことはない。
生活歴: 会社員。夫と子どもと3人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。
家族歴: 特記すべきことはない。
現症: 意識は清明。身長 153 cm、体重 48.2 kg。脈拍 72/分、整。血圧 98/56 mmHg。呼吸数 16/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺腫を認めない。胸部では乳頭の圧迫で白色乳汁分泌を認める。腹部に異常を認めない。両耳側半盲を認める。
検査所見: 血液所見:赤血球 357万、Hb 11.1 g/dL、Ht 34%、白血球 4,200、血小板 18万。血液生化学所見: AST 21 U/L、ALT 14 U/L、LD 146 U/L(基準 120~245)、尿素窒素 15 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、血糖 78 mg/dL、Na 171 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L。内分泌検査所見: ACTH 9 pg/mg(基準 60以下)、コルチゾール 1.9 μg/dL(基準 5.2~12.6)、TSH 0.76 μU/mL(基準 0.500~5.00)、FT₃ 2.27 pg/mL (基準 2.30~4.30)、FT₄ 0.51 ng/dL (基準 0.90~1.70)、LH 0.3 mIU/mL (基準1.8~7.6)、FSH 4.4 mIU/mL (基準 5.2~14.4)、エストラジオール <10 pg/mL (基準 11~230)、プロゲステロン 0.2 ng/mL (基準 0.5以下)、プロラクチン 198 ng/mL (基準 0.5以下)。頭部造影MRIで下垂体腺腫を認める。
治療で誤っているのはどれか。
a. 薬物療法で腫瘍の縮小が期待できる。
b. 発熱時は副腎皮質ステロイド補充を減量する。
c. 手術を行う場合、下垂体機能評価を事前に行う。
d. ホルモン補充は副腎皮質ステロイドから開始する。
e. 副腎皮質ステロイド補充開始後は尿崩症の出現に注意する。
逆である。発熱時にはステロイドの増量を検討する。