83歳の男性。食欲が低下し元気がないため妻とともに来院した。

現病歴: 約5年前から物忘れが目立ち、Alzheimer型認知症と診断されていた。1年前から記憶の低下がさらに進行し、5分前のことも忘れていることが多かった。同居する妻によると、2週前に38℃の発熱があったが市販の総合感冒薬を内服して解熱したという。その頃から家でうとうとしながら座っていることが増え、食事量も半分くらいに減った。1週前、通い慣れている施設から家へ帰る道が初めて分からなくなった。昨日トイレ動作にも介助を要するようになったため、他院において緊急で頭部単純CTを行ったが、異常はなかった。本人は特に苦痛を訴えないが、妻によると3日前から喀痰がみられるという。

既往歴: 糖尿病でDPP-4阻害薬を服用中である。

生活歴: 喫煙は20本/日を40年間。飲酒は機会飲酒。妻と2人暮らし。

家族歴: 父母とも老衰で死亡。

現症: 意識レベルはJCSⅠ-2。身長 165 cm、体重 60 kg。体温 37.0 ℃。脈拍 96/分、整。血圧 106/60 mmHg。呼吸数 22/分。SpO₂ 94%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音に異常を認めない。右下背部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。浮腫を認めない。瞳孔と眼球運動とに異常を認めない。腱反射は正常で運動麻痺、感覚障害および運動失調を認めない。

検査所見: 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に赤血球、白血球を認めない。血液所見:赤血球 370万、Hb 12.0 g/dL、Ht 36%、白血球 11,300 (好中球 79%、好酸球 1%、好塩基球 0%、単球 6%、リンパ球 13%)、血小板26万。血液生化学所見: 総蛋白 7.5 g/dL、アルブミン 3.5 g/dL、AST 22 U/L、ALT 11 U/L、ALP 217 U/L (基準 115359)、γ-GT 29 U/L (基準850)、アミラーゼ 94 U/L (基準 37160)、尿素窒素 29 mg/dL、クレアチニン 1.1 mg/dL、血糖 140 mg/dL、HbA1c 6.8% (基準 4.66.2)、Na 136 mEq/L、K 4.6 mEq/L、CI 96 mEq/L、Ca 8.2 mg/dL。CRP 20 mg/dL。


次に行うべき検査はどれか。

a. 頭部MRI

b. 腰椎穿刺

c. 腹部造影CT

d. 胸部エックス線撮影

e. 上部消化管内視鏡検査

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検査の結果を確認すると「動脈血ガス分析 (room air):pH 7.38、PaCO₂ 45 Torr、PaO₂ 30 Torr、HCO₃⁻ 26 mEq/L」とあった。患者の呼吸数や SpO₂ (room air)は来院時と変化はない。採血時の状況を確認すると、シリンジヘの逆流が弱く陰圧をかけながら採取したとのことであった。

適切な対応はどれか。

a. 深呼吸を促す。

b. 酸素投与を開始する。

c. Dダイマーを測定する。

d. 心エコー検査を実施する。

e. 動脈血を採取しなおして分析する。

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患者は入院加療の後、退院して介護保健施設に入所する方針となった。介助をすればきざみ食を摂ることができるが、食事中にむせ込むことも多い。

今後の栄養摂取方法を決定するにあたりまず行うべきなのはどれか。

a. 握力の測定

b. 嚥下機能の評価

c. 骨密度の測定

d. 食事嗜好の確認

e. 地域の福祉事務所との相談

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)