22歳の男性。墜落外傷のため救急車で搬入された。

現病歴: 地面から約6mの高所での作業中、誤って下肢から地面に墜落した。強い腰痛と左下肢の痛みを訴える。

既往歴: 特記すべきことはない。

生活歴: 工事現場作業員。

家族歴: 祖父が糖尿病。

現症: 意識レベルJCSⅠ-3。身長 170 cm、体重 60 kg。体温 35.6 ℃。心拍数 128/分、整。血圧 88/60 mmHg。呼吸数 24/分。SpO₂ 97% (リザーバー付マスク 10L/分酸素投与下)。毛細血管再充満時間は3秒と延長している。瞳孔径は右 4mm 左 4mm、対光反射は正常。顔面に挫創がみられる。口腔からの出血はない。頸静脈の怒張はない。胸部は左前胸部に圧痛がみられる。両側呼吸音は正常で左右差を認めない。皮下気腫はない。左下肢は外旋位で痛みのため動かそうとしないが、知覚異常は認めない。左下腿の創部から持続出血がみられ、土が多量に付着している。左足趾の動きに異常を認めない。離握手や開眼、閉眼の指示に応じる。皮膚には冷汗と湿潤がみられる。

検査所見: 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 360万、Hb 10.8 g/dL、Ht 32%、白血球 12,600、血小板 30万、PT-INR 1.4 (基準 0.91.1)、APTT 41.0秒 (基準対照 32.2秒)、血漿フィブリノゲン 168 mg/dL (基準 200400)。血液生化学所見:総蛋白 5.0 g/dL、アルブミン 2.9 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、AST 60 U/L、ALT 22 U/L、CK 130 U/L (基準 30140)、尿素窒素 30 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、血糖 124 mg/dL、Na 133 mEq/L、K 4.8 mEq/L、CI 104 mEq/L。12誘導心電図:正常。画像所見:迅速簡易超音波検査〈FAST〉で心嚢腔、胸腔および腹腔内の液体貯留はみられない。胸部エックス線写真で左4-7肋骨骨折と左肺野の透過性低下がみられる。骨盤エックス線写真で左第5腰椎横突起骨折、左腸骨骨折、左恥坐骨骨折および左仙腸関節の離開がみられる。下腿エックス線写真で左脛骨骨幹部骨折がみられる。


病態として最も考えられるのはどれか。

a. アナフィラキシーショック

b. 出血性ショック

c. 神経原性ショック

d. 心原性ショック

e. 閉塞性ショック

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対応として適切なのはどれか。3つ選べ。

a. 試験開腹術

b. 輸血の準備

c. 下腿の筋膜切開

d. 骨盤骨折に対する創外固定

e. 破傷風トキソイドの筋肉内投与

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その後、努力呼吸と舌根沈下が出現したため気管挿管を行った。CT検査に向かう準備をしていたところ、急にSpO₂が 70%となった(6L/分酸素投与下)。

意識レベルはJCSⅢ-100。脈拍 52/分、整。収縮期血圧 50 mmHg、拡張期血圧は測定不可。瞳孔径は右 3mm、左 3mm。対光反射は正常である。左前胸部に皮下気腫が出現した。聴診では左の呼吸が消失し、打診で左前胸部に鼓音がみられる。再度行った迅速簡易超音波検査〈FAST〉では心嚢腔、胸腔および腹腔内液体貯留はみられない。

直ちに行うべき処置はどれか。

a. 胸腔穿刺

b. 胸骨圧迫

c. 高圧酸素療法〈高気圧酸素治療〉

d. 心嚢穿刺

e. 鎮痛薬投与

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)