A さん(92 歳、女性)は、脳梗塞の後遺症のため要介護4で、2年前から特別養護老人ホームに入所している。入所時は、日常生活は全介助で、話しかけるとうなずいたり首を振るなど自分の意思を伝えることができた。A さんは歌が好きで、歌に関するレクリエーションには車椅子で参加し、笑顔がみられていた。家族は週1回、面会に来ていた。入所時に、A さんは「延命処置を望まない」、家族は「できるだけ長生きしてほしい」と言っていた。
最近、ほとんど食事を摂らなくなり、閉眼していることが多く、看護師や施設職員の声かけに対する反応が徐々に鈍くなってきた。家族が面会時に声をかけると、目を開け、うなずくなどの意思表示がある。A さんの状態から、医師と相談し看護師は看取りの準備が必要であると判断した。
A さんの死の迎え方を決めるために優先されるのはどれか。
1. 主治医の治療方針
2. 施設の職員のケア方針
3. 入所時の A さんの意思
4. 現在のAさんと家族の意思
A さんの死の迎え方を決める際に最も優先されるべきは「4. 現在のAさんと家族の意思」です。末期の医療決定においては、患者自身の現在の意思と家族の意向が最も重要であり、それが医療倫理の基本とされています。A さんがまだ意思表示が可能な状況で、特に家族が面会時にその意志を確認できる場合、その意思を尊重することが望ましいです。また、家族の意向も重要であり、彼らとのコミュニケーションを通じて最終的な決定を形成することが重要です。
A さんは、食事を全く食べず、水分も取らなくなり、皮膚も乾燥してきた。家族は毎日面会にきて声をかけているが、反応がなくなってきた。
A さんが死に向かう中で、穏やかに過ごすための援助で適切なのはどれか。
1. 好きな音楽をかける。
2. 輸液療法を検討する。
3. 家族の面会を制限する。
4. 皮膚の清潔ケアを頻回に行う。
A さんが穏やかに過ごすための援助として最も適切なのは「1. 好きな音楽をかける」です。この選択肢は、Aさんが生前に音楽を楽しむことを好んでいたことに基づいています。音楽は、特に終末期の患者において、心地よさやリラクゼーションを提供し、不安を軽減する効果があることが示されています。また、親しいメロディは過去の良い思い出を呼び起こすことがあり、精神的な安らぎを提供する可能性があります。
3日後、A さんは声かけに全く反応しなくなったため、看護師は死期が迫っていると判断した。
看護師が観察する A さんの状態はどれか。
1. 尿量の増加
2. 流涎の増加
3. 下痢便の出現
4. 下顎呼吸の出現
看護師が観察する A さんの状態で、死期が迫っている際によく見られる症状は「4. 下顎呼吸の出現」です。この呼吸パターンは、死が近づいているときにしばしば見られるもので、呼吸が不規則で浅くなる現象です。これは神経制御の喪失と関連があり、末期状態における一般的な徴候です。