A さん(35 歳、男性)は1人暮らし。両親は他県に住んでいる。30 歳のときに双極性障害と診断され、これまでに4回の入退院を繰り返している。給料をインターネットゲームの利用料金で度々使い果たし、それが原因で両親と何度も口論になったことがある。仕事では同僚とトラブルを起こすたびに転職を繰り返しており、今回も同僚と口論になり自ら退職した。A さんは「前の職場の同僚に嫌がらせをしてやる」と母親に電話をかけ、心配した両親が一緒に精神科病院を受診した。診察室では多弁で大きな声を出し、椅子を蹴るなどの行為がみられた。医師の診察の結果、入院して治療することになった。
入院時、A さんの BMI は 29.5。この数日は食事をとっていなかった。入院後も 興奮状態がおさまらず、壁に頭を打ちつけはじめたため、医師から抗精神病薬の点 滴静脈内注射と身体的拘束の指示がでた。 身体的拘束中の A さんの看護で正しいのはどれか。2つ選べ。
1. 水分摂取は最小限にする。
2. 肺血栓塞栓症を予防する。
3. 頻回に様子を見に来ることを伝える。
4. 身体的拘束の原因となった行為を一緒に振り返る。
5. 興奮状態が落ち着いたら看護師の判断で身体的拘束を解除する。
「肺血栓塞栓症を予防する」は、長時間の拘束や移動不足によって生じる可能性のある肺血栓塞栓症(DVT)のリスクを考慮しています。定期的な体位変換、足の運動指導、必要に応じて抗凝固療法の使用などが考慮されます。これは身体的拘束中の患者にとって重要な予防策です。
「頻回に様子を見に来ることを伝える」は、身体的拘束中の患者への心理的支援を提供し、安心感を与えるために重要です。身体的拘束は極めてストレスフルな体験であり、患者が孤独感や不安、恐怖を感じないようにするためには、頻繁に様子を見に行き、患者の状態やニーズに応じたケアを提供することが必要です。
入院後 1週、身体的拘束は解除された。A さんは常に動き回り、他の患者への過干渉が続いている。食事中に立ち上がりホールから出ていこうとするため、看護師が止めると強い口調で言い返してくる。A さんは「ゲーム関連の仕事を探したい。早く退院させろ」と1日に何度も看護師に訴えるが、主治医は退院を許可していない。
A さんへの対応で適切なのはどれか。
1. 休息できる場所へ誘導する。
2. 過干渉となる理由を確認する。
3. 退院後は家族と暮らすように提案する。
4. 仕事に必要なスキルについて話し合う。
「休息できる場所へ誘導する」は、Aさんの高揚した気分や落ち着きのなさを軽減するために有効な手段です。休息やリラクゼーションの時間を提供することで、彼のエネルギーレベルを下げ、落ち着かせることができる可能性があります。
入院後 2か月、A さんの状態は落ち着き、退院に向けての準備が進められている。A さんは、「会社で同僚と言い合いになってこれまでも仕事を変わってきた。そのたびに調子が悪くなって、何度も入院した。家族と言い合いをしたぐらいで近所から苦情があって、嫌になって引っ越した」と看護師に訴えた。
A さんの退院に向けて連携をとる機関はどれか。
1. 警察
2. 保健所
3. 保護観察所
4. 地域活動支援センター
保健所は、公衆衛生の管理や感染症対策を主に行う機関ですが、地域住民の健康相談に応じたり、特定の健康問題に対する支援プログラムを提供することもあります。双極性障害の管理においては、直接的な役割を果たすことは少ないかもしれませんが、一部地域では精神保健福祉に関わるサービスや情報提供を行っている場合もあります。
地域活動支援センターは、双極性障害を含む精神障害を持つ人々が地域社会で自立した生活を送るための支援を行う機関です。就労支援、日常生活スキルの向上、社会参加活動など、多岐にわたるサービスを提供し、Aさんのような人々が社会復帰を図る上で大きな支えとなります。