A さんは右上下肢に力が入らず、妻の声かけにうなずくが発語はなかった。頭部 CTで左中大脳動脈領域の脳梗塞と診断されたため救急外来で血栓溶解療法が行われ、入院となった。血栓溶解療法による治療後2週。A さんは右上下肢麻痺、失語などの後遺症があるが、自宅への退院を希望したため、機能訓練の目的で回復期リハビリテーション病棟に転棟した。転棟後1日。A さんはベッドから車椅子への移乗動作の訓練を始めたが、健側の下肢筋力が低下しているため、立位のときにバランスを崩しやすい状況である。
A さんへの移乗時の援助で適切なのはどれか。2つ選べ。
1.ズボンのウエスト部分をつかんで引き上げる。
2.ベッドの高さを車椅子の座面より低くする。
3.床に離床センサーマットを設置する。
4.車椅子を A さんの左側に準備する。
5.移乗前に血圧測定を行う。
車椅子を A さんの左側に準備する - Aさんの右側に麻痺があるため、彼の左側がより機能的です。移乗時には左側に力を頼るため、車椅子を左側に置くことが効果的です。これにより、移乗時のバランスとサポートが改善され、より安全に移乗を行うことができます。
移乗前に血圧測定を行う - 血栓溶解療法後の患者は血圧の変動があるかもしれません。特に立ち上がる際に低血圧や立ちくらみが発生する可能性があります。移乗前に血圧を測定することで、立ちくらみやその他の循環系の問題を予防し、患者の安全を確保することができます。
これらの対策は、Aさんが安全に日常活動に戻るために重要なステップです。
A さんは妻や看護師との話の内容は理解しているようだが、返答の際に言葉を間違えてしまうことや言葉がなかなか出てこないことがある。
A さんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
1. A さんの言葉を推測しながら話す。
2. A さんの言い誤りを訂正する。
3. 大きな声で話す。
4. 話題を変える。
この選択肢は、Aさんが意図することを理解しようとすることでコミュニケーションを助けます。言葉を間違えたり、出てこなかったりするとき、彼の意図を推測し、彼が言いたいことを理解しようとすることで、彼がコミュニケーションにおいて自信を持ち、安心感を感じることができます。
転棟後5週。A さんは歩行練習が開始となり、病棟内では日常生活動作<ADL>も徐々に自立してきている。食事は時々むせがみられるが、配膳すれば自力で摂取できる。排泄は車椅子でトイレへ移動しており、ズボンの着脱に介助が必要である。入浴はシャワーチェアーに座り、手が届くところは自分で洗うことができる。歯磨きは一部介助が必要である。A さんは早く自宅に帰りたいと話し、午前と午後の機能訓練には積極的に参加しているが、機能訓練後は「疲れて何もしたくない」とベッドで横になり眠っている。夕方に面会に来た妻は「面会時にいつも疲れたと言って眠っているので、このままの状態で退院して家で世話ができるかどうか自信がありません。息子夫婦も仕事が忙しいので、介護を手伝ってもらえるかわかりません」と言っている。
看護師の妻への対応で最も適切なのはどれか。
1. 施設入所の検討を提案する。
2. トイレ介助の方法を指導する。
3. A さんの機能訓練中の様子の見学を勧める。
4. 息子夫婦にも介護に参加してもらうよう助言する。
この選択肢は、妻にAさんの進歩と日々のリハビリの挑戦を直接観察する機会を提供します。これにより、妻はリハビリの過程を理解し、Aさんの自宅での生活への移行に対する現実的な期待を持つことができます。また、リハビリの専門家と直接交流することで、具体的な支援や改善策についての質問をする機会も得られます。