72歳の男性。発熱と全身の倦怠感を主訴に来院した。
現病歴:2か月前に37℃台の発熱があり、かかりつけ医から抗菌薬を処方された。7日後に解熱したが、倦怠感と食欲低下は持続していた。10日前から38℃台の発熱があり、再度かかりつけ医を受診した。抗菌薬と解熱薬とを処方されたが、発熱と倦怠感が持続するため受診した。
既往歴:高血圧症と糖尿病で内服治療中。
生活歴:一人暮らし。無職。喫煙は20本/日を50年間。飲酒はビール1,000~1,500mL/日を50年間。
家族歴:父親が胃癌で死亡。母親が大腸癌で死亡。
現症:意識は清明。身長 182 cm、体重 90 kg。体温 38.0 ℃。脈拍 108/分、整。血圧 138/80 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96%(room air)。皮膚は乾燥している。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥が著明である。頸静脈の怒張を認めない。表在リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸蠕動音は正常。肋骨脊柱角に叩打痛を認めない。下腿に浮腫を認めない。神経学的所見に異常を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白 1+、糖 3+、ケトン体 1+、潜血(-)、沈渣に白血球を認めない。血液所見:赤血球 440万、Hb. 15.1 g/dL、Ht 44%、白血球 14,500 (桿状核好中球 2%、分葉核好中球 88%、好酸球 0%、好塩基球 0%、単球 4%、リンパ球 6%)、血小板 32万、PT 87%(基準 80~120)。血液生化学所見:総蛋白 7.1 g/dL、アルブミン 3.5 g/dL、総ビリルビン 0.5 mg/dL、直接ビリルビン 0.2 mg/dL、AST 57 U/L、ALT 43 U/L、LD 355 U/L(基準 176~353)、ALP 349 U/L(基準 115~359)、γ-GTP 109 U/L(基準 8~50)、アミラーゼ38 U/L(基準 37~160)、CK 76 U/L(基準 30~140)、尿素窒素 38 mg/dL、クレアチニン 1.1 mg/dL、尿酸 9.0 mg/dL、血糖 284 mg/dL、HbA1c. 9.6%(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 174 mg/dL、トリグリセリド 179 mg/dL、Na. 135 mEq/L、K 4.9 mEq/L、Cl 105 mEq/L。CRP 11 mg/dL。心電図で洞性頻脈を認める。胸部エックス線写真で異常を認めない。
その後の経過:精査のため入院とし、腹部超音波検査で肝膿瘍を認めた。超音波ガイド下膿瘍刺吸引検査を行い、採取した刺液を培養検査に提出し、抗菌薬の投与を開始した。培養検査ではGram陽性球菌が検出された。
原因菌として可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
a. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
b. B群連鎖球菌(GBS)
c. 緑色連鎖球菌
d. リステリア
e. 肺炎球菌
肝膿瘍の原因菌
抗菌薬投与に加えて、早期に行うべき治療はどれか。2つ選べ。
a. 肝切除術
b. 免疫グロブリン製剤投与
c. 内視鏡的逆行性胆道ドレナージ
d. 超音波ガイド下膿瘍穿刺ドレナージ
e. インスリンによる血糖コントロール
肝膿瘍の治療はドレナージ。また血糖コントロールも必要。
治療が奏功し退院が計画された。ADLは自立しており、明らかな認知機能障害を認めないが、食事の準備と服薬管理とに問題がみられた。 この患者の退院支援として適切なのはどれか。2つ選べ。
a. 運動器リハビリテーション
b. 訪問入浴サービス
c. 訪問薬剤管理
d. 配食サービス
e. 自宅改装
食事の準備と服薬管理とに問題がみられているので、上記が正解。