36 歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠33週に、倦怠感と口渇のため受診した。

現病歴:妊娠前のBMIは20.8であった。これまで毎年受けている健診で異常を指摘されたことはない。妊娠 18 週で尿糖陽性を指摘されたが、その後妊婦健康診査に行かなくなった。妊娠 25 週で全身倦怠感が出現した。2日前から倦怠感が増悪し、口渇が出現した。

既往歴:特記すべきことはない。

生活歴:喫煙歴および飲酒歴はない。

家族歴:父が高血圧症。

現症:身長 152 cm、体重 62 kg。体温 37.6 ℃。脈拍 108/分、整。血圧 112/82 mmHg。呼吸数 26/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥している。心音と呼吸音とに異常を認めない。子宮底長 35 cm、腹囲 95 cm。腱反射に異常を認めない。眼底に糖尿病網膜症の所見を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白 (-)、糖 2+、ケトン体 (-)。血液所見:赤血球 468 万、Hb 13.9 g/dL、Ht 42 %、白血球 10,300 (桿状核好中球 30 %、分葉核好中球 45 %、好酸球 1 %、好塩基球 1 %、単球 6 %、リンパ球 17 %)、血小板 21 万。血液生化学所見:AST 28 U/L、ALT 16 U/L、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、尿酸 4.9 mg/dL、血糖 255 mg/dL、HbA1c 7.8 % (基準 4.6〜6.2)、Na 143 mEq/L、K 4.9 mEq/L。免疫血清学所見:抗 GAD 抗体陰性。腹部超音波検査では児の推定体重 2,450 g (+2.0 SD)。明らかな心疾患を認めない。


この母体と胎児の状態について正しいのはどれか。2つ選べ。

a. 糖尿病合併妊娠である。

b. 胎児は低血糖になりやすい。

c. 1週間前の耐糖能は正常である。

d. 妊娠によりインスリン抵抗性が生じている。

e. 母体の高血糖と胎児の過体重には関連性がある。

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薬物療法として適切なのはどれか。

a. NSAIDs

b. β 遮断薬

c. インスリン

d. 経口血糖降下薬

e. 陽イオン交換樹脂製剤

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その後の経過:治療が奏功し児は在胎 39 週 1 日、出生体重 3,796 g で、経腟分娩で出生した。Apgar スコア 9点(1分)、 9点(5分)。出生後1時間の児の血糖は 58 mg/dL。生後1時間30分から小刻みに四肢を震わせることを繰り返すようになった。体温 37.3 ℃。心拍数 150/分、整。呼吸数50/分。SpO2 99 % (room air)。大泉門は平坦、心音と呼吸音とに異常を認めない。筋緊張は正常で、Moro反射は正常に出現する。

直ちに児に行う検査はどれか。

a. 頭部 MRI

b. 血糖値測定

c. 神経伝導検査

d. 動脈血ガス分析

e. 胸腹部エックス線

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)