82歳の女性。転倒し救急車で搬入された。
現病歴:廊下で倒れているところを家族が発見し、救急車を要請した。半年前から階段昇降時の息切れを自覚していた。
既往歴:68歳時から高血圧症のためカルシウム拮抗薬、糖尿病のためビグアナイド薬、75歳時から深部静脈血栓症のためワルファリン、76歳時から不眠症のためベンゾジアゼピン系睡眠薬、骨粗鬆症のためビスホスホネート製剤で治療中。
生活歴:日常生活動作<ADL>は自立。
家族歴:特記すべきことはない。
現症:問いかけに対し名前を言うことができる。身長 152 cm、体重 42 kg。体温 36.6 ℃。心拍数 72/分、整。仰臥位で血圧 112/68 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に黄染を認めない。前頭部に2cm大の皮下血腫を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察を含む身体診察に異常を認めない。
転倒の原因を評価するための質問として有用性が低いのはどれか。
a. 「転倒した時のことを覚えていますか」
b. 「打撲して最も痛い部位はどこですか」
c. 「転倒するときに何かにつまずきましたか」
d. 「手足のしびれや、動かしづらさはありませんか」
e. 「これまで痙攣発作を起こしたと言われたことがありますか」
痛い部分を聞いても転倒した原因はわからない。
頭部CTでは皮下血腫のみで頭蓋内に異常を認めなかった。座位にしたところ1分後にふらつきを生じ「目の前が暗くなる」と訴えた。心拍数 120/分、整。血圧 82/40 mmHg。呼吸数 20/分。直腸診で黒色便の付着を認める。静脈路を確保して輸液を開始し、血圧は 110/62 mmHg に上昇した。
検査所見:血液所見:赤血球 245 万、Hb 7.5 g/dL、Ht 24 %、白血球 9,600、血小板 18 万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 3.2 g/dL、AST 20 U/L、ALT 30 U/L、尿素窒素 65 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.5 mEq/L、Cl 108 mEq/L。
次に優先すべき検査はどれか。
a. 頭部 MRI
b. 腰椎 MRI
c. Holter 心電図
d. 頸動脈超音波検査
e. 上部消化管内視鏡検査
黒色便あり。上部消化管の出血を考える。
この患者において今後の頭蓋内出血の出現を予測する上で、最も注意すべき薬剤内服歴はどれか。
a. ワルファリン
b. ビグアナイド薬
c. カルシウム拮抗薬
d. ビスホスホネート製剤
e. ベンゾジアゼピン系睡眠薬
このなかで出血に関係するのは抗凝固薬であるワルファリン。