80歳の女性。食欲不振を主訴に来院した。
現病歴:昨日の朝から気分が優れず、冷汗と息苦しさが出現し、食欲も低下した。昨晩も熟睡できなかった。今朝も同様の症状が続いていたが、本人は大丈夫と言う。同居している夫が心配し、本人とともに受診した。
既往歴:変形性膝関節症、高血圧症、2型糖尿病。血糖コントロールは良好であった。
生活歴:夫と2人暮らし。ADLはほぼ自立しているが、歩行時に杖が必要である。喫煙は 10 年前まで、20 本/日を 50 年間。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父は脳卒中で死亡。妹が糖尿病。
現症:意識は清明。身長 155 cm、体重 44 kg。体温 36.0 ℃。脈拍 100/分、整。血圧 114/60 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 98 % (room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側の軽度下腿浮腫を認める。両側アキレス腱反射の低下を認める。下肢の振動覚低下なし。
検査所見:尿所見:蛋白 2+、糖 +。血液所見:赤血球 404 万、Hb 12.4 g/dL、Ht 37 %、白血球 15,000、血小板 23 万。血液生化学所見:総蛋白 6.9 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、AST 71 U/L、ALT 21 U/L、γ-GTP 24 U/L (基準 8〜50)、LD 419 U/L (基準 176〜353)、CK 450 U/L (基準 30〜140)、CK-MB 42 U/L (基準 20 以下)、血糖 234 mg/dL、HbA1c 6.2 % (基準 4.6〜6.2)、尿素窒素 18 mg/dL、クレア チ ニ ン 0.9 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 102 mEq/L。CRP 0.1 mg/dL。12 誘導心電図:洞調律で V 1-V 誘導で ST 上昇、Ⅱ、Ⅲ、aVF、V 5-V 6誘導で ST 低下を認める。画像所見:胸部エックス線写真で心胸郭比56%、肺血管影の増強および両側の肋骨横隔膜角の鈍化を認めない。
最も可能性が高いのはどれか。
a. 肺気腫
b. 急性冠症候群
c. 肺血栓塞栓症
d. 甲状腺機能亢進症
e. 上腸間膜動脈血栓症
糖尿病の神経障害によりに胸痛が無かった症例。
血糖値と HbA1c の乖離の要因として考えられるのはどれか。
a. 喫煙歴
b. 亜鉛欠乏
c. 肝機能障害
d. 白血球増多
e. 急激な高血糖
HbA1cは最近2-3ヶ月程度の血糖値をあらわすものなので、急激な血糖値変化は反映しない。
1週間の集中治療室での管理の後に一般病棟へ転棟し、引き続き3週間の入院期間を必要とした。バイタルサインは安定し、食事も全量摂取であったが、変形性膝関節症による痛みでリハビリテーションを十分に施行できず、ほぼベッド上にいる状態であった。一般病棟転棟後に施行した Mini-Mental State Examination<MMSE>28 点 (30点満点)。退院前日の夜間にトイレから病室に戻る際に転倒した。
転倒の要因として考えにくいのはどれか。
a. 膝関節症
b. 長期臥床
c. 起立性低血圧
d. 認知機能障害
e. 糖尿病性神経障害
認知機能障害のみでは転倒はしない。