65 歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。
現病歴:1 時間前、自転車で走行中に転倒した。左胸部を強打し、直後から呼吸困難、胸痛および血痰が出現した。当初、痰にわずかに血が混じる程度であったが、徐々に出血の量と回数が増加し呼吸困難も増悪したため、救急外来を受診した。
既往歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:母が高血圧症。
現症:意識は清明。身長 159 cm、体重 70 kg。体温 37.2 ℃。脈拍 104/分、
整。血圧 96/60 mmHg。呼吸数 22/分。SpO₂ 94 %(room air)。皮膚は左側胸部に10 × 5 cm の出血斑を認める。眼瞼結膜は貧血様である。左側胸部に圧痛を認める。心音に異常を認めない。呼吸音は左上前胸部で減弱している。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に異常を認めない。胸部エックス線写真で左肺の虚脱と左胸腔に胸水の貯留を認めた。
次に行う検査として正しいのはどれか。
a. 胸部 CT
b. 胸部 MRI
c. FDG-PET
d. 肺動脈造影検査
e. 肺血流シンチグラフィ
胸部CTは、肺や胸膜の損傷の程度を詳細に評価できるため、この状況において最も適切な選択肢。肺の虚脱、胸水、およびその他の潜在的な胸部損傷を詳細に視覚化できる。
血液検査を行ったところ、以下の結果が得られた。
血液所見:赤血球 321 万、Hb 9.0 g/dL、Ht 28 %、白血球 10,300、血小板 12 万、 D ダイマー0.2 μg/mL(基準 1.0 以下)。血液生化学所見:総蛋白 5.7 g/dL、アルブミン 2.9 g/dL、 総ビリルビン 0.6 mg/dL、 直接ビリルビン 0.2 mg/dL、 AST 20 U/L、ALT 25 U/L、LD 185 U/L(基準 120~245)、ALP 110 U/L(基準 38 ~113)、尿素窒素 11 mg/dL、クレアチニン 0.4 mg/dL、尿酸 6.5 mg/dL、血糖 85 mg/dL、HbA1c 5.0 %(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 210 mg/dL、トリグリセリド 110 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 101 mEq/L。
治療のためベット上安静が必要であると判断された。
肺塞栓症予防のため有用なのはどれか。
a. 酸素投与
b. 抗菌薬投与
c. 血栓溶解薬投与
d. 気管支拡張薬吸入
e. 弾性ストッキング着用
弾性ストッキングは、下肢の静脈血流の改善を助け、血栓形成を予防する。
ベッド上での安静を必要とする患者において、肺塞栓症の予防策として効果的。