32 歳の女性。頸部リンパ節腫大を主訴に来院した。 3 週間前から左頸部の腫れに気付いていた。その後、右頸部も腫れてきたので受診した。発熱、体重減少および盗汗はない。生来健康。ペット飼育歴とアレルギー歴はない。夫は 3 か月前、陰茎に無痛性潰瘍があり治療歴がある。
意識は清明。身長 168 cm、体重 61 kg。体温36.7 ℃。脈拍 78/分、整。血圧 106/68 mmHg。呼吸数 16/分。SpO₂ 100 %(roomair)。手掌と足底にびまん性の一部癒合した径 3 mm の紅斑・丘疹を認める。口腔内には潰瘍性病変を認めない。咽頭は発赤を認めない。左頸部に径 5 cm の可動性があり、柔軟なリンパ節を 1 個触知する。右頸部にも同様に径 3 cm のリンパ節腫大を 1 個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部に肝・脾を触知しない。
最も適切な治療薬はどれか。
a. 抗真菌薬
b. 抗ウイルス薬
c. セフェム系薬
d. ペニシリン系薬
e. カルバペネム系薬
この患者の症状と病歴から考えられる最も適切な治療薬は「d. ペニシリン系薬」である。
理由としては、患者の夫が3か月前に陰茎に無痛性潰瘍があり治療歴があること、そして現在の患者の頸部リンパ節腫大や手掌と足底にびまん性の紅斑・丘疹があることから、梅毒の二次感染症が強く疑われる。
梅毒の二次感染症は、Treponema pallidum(梅毒トレポネーマ)によって引き起こされ、ペニシリン系抗生物質(特にベンジルペニシリン、ペニシリンG)が標準治療薬として用いられる。
他の選択肢について説明する:
- **a. 抗真菌薬**:真菌感染の症状や背景がないため不適切。
- **b. 抗ウイルス薬**:ウイルス感染を示唆する症状がないため不適切。
- **c. セフェム系薬**:一般的な細菌感染に広く用いられるが、梅毒に対しては第一選択ではない。
- **e. カルバペネム系薬**:広範囲の抗生物質だが、梅毒に対する標準治療薬ではない。
したがって、最も適切な治療薬は「d. ペニシリン系薬」である。