65 歳の女性。異常行動のため救急車で搬入された。
現病歴:1 週間前から便秘があった。数日前に買い物から帰宅した際、買ったものをゴミ箱に捨てたりお金をばらまくなどの行動があった。今朝からぼんやりとして呼びかけに反応が鈍いため夫が救急車を要請した。
既往歴:2 型糖尿病と脂肪肝のため自宅近くの診療所に通院し、DPP-4 阻害薬を内服している。
家族歴:特記すべきことはない。
生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。
現症:うとうとしているが呼びかけで目を開け会話ができる。身長 154 cm、体重 72 kg。BMI 30.4。体温 36.4 ℃。心拍数 80/分、整。血圧 104/64 mmHg。呼吸数 16/分。SpO₂ 98 %(room air)。眼球結膜に黄染を認める。甲状腺腫と頸部リンパ節とを触知しない。前胸部にくも状血管拡張と手掌紅斑とを認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を触知しない。脾臓を左肋骨弓下に 1 cm 触知する。下腿に浮腫を認めない。
検査所見:血液所見:赤血球 396 万、Hb 12.1 g/dL、白血球 3,800、血小板 10万、PT-INR 1.0(基準 0.9~1.1)。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン3.4 g/dL、総ビリルビン 3.7 mg/dL、AST 74 U/L、ALT 52 U/L、γ-GT 63 U/L(基準 9 ~32)、コリンエステラーゼ 150 U/L(基準 201~421)、アンモニア 180 μg/dL(基準 18~48)、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、血糖 148 mg/dL、HbA1c 7.6 %(基準 4.9~6.0)、Na 142 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Ca 8.8 mg/dL。頭部単純 CT で異常を認めない。
この患者にみられる神経所見はどれか。
a. 筋強剛
b. 企図振戦
c. 項部硬直
d. Barré 徴候
e. 固定姿勢保持困難〈asterixis〉
この患者に見られる神経所見は 固定姿勢保持困難〈asterixis〉
症状と検査所見は、肝性脳症を示唆している。高アンモニア血症(アンモニア 180 μg/dL)や肝機能異常(総ビリルビン 3.7 mg/dL、AST 74 U/L、ALT 52 U/L、γ-GT 63 U/L)が認められる。
治療で適切なのはどれか。
a. 新鮮凍結血漿の輸血
b. 50 % ブドウ糖の静注
c. 生理食塩水の点滴静注
d. アルブミン製剤の点滴静注
e. 分岐鎖アミノ酸製剤の点滴静注
肝性脳症の治療においては、アンモニアの産生を減少させることが重要で。分岐鎖アミノ酸製剤はアンモニアを減少させる。