この患者にみられる神経所見はどれか。
a. 筋強剛
b. 企図振戦
c. 項部硬直
d. Barré 徴候
e. 固定姿勢保持困難〈asterixis〉
この患者に見られる神経所見は「e. 固定姿勢保持困難〈asterixis〉」である。
以下に理由を説明する:
患者の症状と検査所見は、肝性脳症を示唆している。特に高アンモニア血症(アンモニア 180 μg/dL)や肝機能異常(総ビリルビン 3.7 mg/dL、AST 74 U/L、ALT 52 U/L、γ-GT 63 U/L)が認められる。肝性脳症の特徴的な神経所見として、固定姿勢保持困難(asterixis)が含まれる。これは、手を前に伸ばし、手首を背屈させた状態で起こる不随意なフラッピング運動である。
他の選択肢について説明する:
- **a. 筋強剛**:筋強剛はパーキンソン病などで見られるが、肝性脳症の主な症状ではない。
- **b. 企図振戦**:企図振戦は、意図的な動作を行う際に生じる振戦で、主に小脳病変に関連するが、肝性脳症の主な症状ではない。
- **c. 項部硬直**:項部硬直は、髄膜炎やくも膜下出血などで見られるが、この患者の症状とは一致しない。
- **d. Barré 徴候**:Barré徴候は、片側性の筋力低下を示すもので、脳卒中などに関連するが、肝性脳症の主な症状ではない。
したがって、この患者に見られる神経所見は「e. 固定姿勢保持困難〈asterixis〉」である。
治療で適切なのはどれか。
a. 新鮮凍結血漿の輸血
b. 50 % ブドウ糖の静注
c. 生理食塩水の点滴静注
d. アルブミン製剤の点滴静注
e. 分岐鎖アミノ酸製剤の点滴静注
この患者の症状および検査所見から、肝性脳症が疑われます。肝性脳症は、肝機能の低下により血中のアンモニアなどの有害物質が脳に影響を及ぼし、意識障害や異常行動を引き起こす状態です。患者のアンモニアレベルが180 μg/dLと非常に高いことが、この診断を支持しています。
肝性脳症の治療においては、アンモニアの産生を減少させることが重要です。分岐鎖アミノ酸製剤は、肝性脳症の治療に効果的であり、特に高アンモニア血症を減少させるのに役立ちます。
したがって、治療で適切なのは「e. 分岐鎖アミノ酸製剤の点滴静注」です。
他の選択肢についての説明:
- **a. 新鮮凍結血漿の輸血**:新鮮凍結血漿は凝固因子補充のために使用されるが、この症例では適切ではない。
- **b. 50 % ブドウ糖の静注**:低血糖の治療に用いられるが、この患者の血糖値は148 mg/dLであり、低血糖ではない。
- **c. 生理食塩水の点滴静注**:水分補給や電解質バランスの是正に用いられるが、アンモニアレベルを低下させる効果は期待できない。
- **d. アルブミン製剤の点滴静注**:低アルブミン血症や浮腫の治療に使用されるが、この症例では主な問題は高アンモニア血症である。
したがって、この患者に適切な治療は「e. 分岐鎖アミノ酸製剤の点滴静注」です。