78 歳の男性。嗄声を主訴に来院した。
現病歴:1 か月前に嗄声が出現した。2 週間前から飲水時に咳嗽が出現するようになり自宅近くの診療所で鎮咳薬を処方された。咳嗽は改善せず、 3 日前から喀痰に血液が混じるようになった。
既往歴:3 年前に原発性肺癌のために右肺下葉切除術が施行され経過観察となっていた。 1 年前から自己判断で定期的な受診を中断していた。
生活歴:65 歳までは会社員。妻と 2 人暮らし。喫煙は 70 歳まで 20 本/日を 50年間。飲酒はビール 350 mL/日。
家族歴:弟が 70 歳台で胃癌。
現 症:意識は清明。身長 162 cm、体重 54 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 124/72 mmHg。呼吸数 16/分。SpO₂ 98 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 380 万、Hb13.8 g/dL、Ht 35 %、白血球 7,600、血小板 24 万。血液生化学所見:総蛋白 6.0g/dL、アルブミン 3.0 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、AST 25 U/L、ALT19 U/L、LD 343 U/L(基準 124~222)、尿素窒素 24 mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL。胸部エックス線写真で右第 1 弓の突出を認める。胸部造影 CT で縦隔リンパ節腫大を認めた。腹部造影 CT と骨シンチグラフィで異常を認めなかった。腫大した縦隔リンパ節に対して超音波内視鏡下に穿刺生検を施行し、肺腺癌術後のリンパ節再発と診断された。
次に行うべき検査はどれか。
a. 頭部造影 MRI
b. 腹部造影 MRI
c. 頸部超音波検査
d. 肺動脈造影検査
e. 肺血流シンチグラフィ
縦隔リンパ節の局所再発に対して化学放射線療法を施行した。その後、薬剤性肺 障害による呼吸不全をきたし、気管挿管による人工呼吸療法となった。薬剤性肺障 害に対して治療を継続したが、呼吸状態の改善がみられない。14 日経過後も長期 間の人工呼吸療法が必要な状態である。
この時点での呼吸管理で適切な処置はどれか。
a. 気管切開術
b. ECMO 導入
c. 声門上器具挿入
d. 経鼻エアウェイ挿入
e. 非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉導入
その後、薬剤性肺障害が改善し人工呼吸器から離脱、一般病棟へ転棟となった。 リハビリテーションを開始して身体機能と食事摂取量は回復し、入院してから 2 か 月後に自宅退院となった。退院して 1 か月後に家族に付き添われて外来受診した。 かろうじて自力歩行しており体重は 3 か月前から 10 kg 減少していた。全身精査を 行ったところ、縦隔リンパ節は以前よりさらに腫大し新たに肝臓と肺に多発転移を 認めた。患者本人と家族は積極的な治療を望んでいない。仏痛を認めないが、癌悪 液質が進行していると診断された。
この時点で行うべき対応はどれか。 2 つ選べ。
a. 放射線療法を勧める。
b. 緩和ケアについて説明する。
c. 在宅ケアに関する患者の意向を聞く。
d. 異なる種類の殺細胞性薬による治療を勧める。
e. 免疫チェックポイント阻害薬による治療を勧める。