55 歳の男性。便秘を主訴に来院した。

現病歴: 3 か月前に会社内で配置転換があり勤務中にトイレに行きにくくなった。元々、便秘がちであり便が硬くなった。 2 週間前から腹部膨満感が出現したため受診した。排便回数は 3 日に 1 回でいきむことなく排便しているが、便は兎糞状である。

既往歴:45 歳から高血圧症で降圧薬を服用している。今まで大腸がん検診を受けていない。

生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。会社員で経理の仕事をしている。海外渡航歴はない。

家族歴:父が 74 歳時に大腸癌で手術。

現 症:意識は清明。身長 165 cm、体重 68 kg(体重の増減はない)。体 温36.4 ℃。脈 拍 72/分、整。血圧 136/80 mmHg。呼吸数 10/分。SpO₂ 97 %(roomair)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内にアフタを認めない。甲状腺と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で腸雑音の亢進・減弱を認めない。直腸診で血液を認めず、明らかな腫瘤を触知しない。下腿に浮腫を認めない。

検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 468 万、Hb 13.9 g/dL、Ht 42 %、白血球 8,300、血小板 21 万。血液生化学所見:総蛋白7.5 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.4mg/dL、AST 22 U/L、ALT 18 U/L、LD 172 U/L(基 準 124~222)、ALP 83 U/L(基準 38~113)、γ-GT 32 U/L(基準 13~64)、アミラーゼ 95 U/L(基準 44~132)、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、血糖 98 mg/dL。CRP 0.2 mg/dL。

胸部エックス線写真では心胸郭比 46 %、肺野に異常を認めない。腹部エックス線写真で小腸ガスや鏡面像を認めない。まず便潜血反応を行うこととした。


この患者の大腸に何らかの病変がある検査前確率(事前確率)を 20 % としたと き、便潜血反応陽性であった場合の検査後確率に最も近いのはどれか。

ただし、便潜血反応の感度は 80 %、特異度は 90 % とする。

a. 33 %

b. 53 %

c. 57 %

d. 67 %

e. 97 %


便潜血反応陽性であったため下部消化管内視鏡検査を行うこととした。

この患者への検査当日の前処置で適切なのはどれか。

a. 下半身を除毛する。

b. 肛門周囲を消毒する。

c. 腸管洗浄液を内服する。

d. バリウムを内服する。

e. ホルマリンを注腸する。

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下部消化管内視鏡の S 状結腸像を別に示す。

この患者に行われた内視鏡治療はどれか。

a. 異物除去術

b. ステント留置

c. 静脈瘤硬化療法

d. ポリペクトミー

e. 内視鏡的粘膜下層剝離術〈ESD〉

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)