61 歳の男性。交通外傷のため救急車で搬入された。
現病歴:乗用車で走行中に塀に衝突し腹部を強打し動けない状態だった。シートベルトを装着しておりエアバッグが作動していた。目撃者が救急車を要請した。
既往歴:虚血性心疾患で抗血小板薬を服用している。
生活歴:飲酒は機会飲酒。
家族歴:父と兄が高血圧症で治療中である。
現 症:意識は清明。身長 162 cm、体重 54 kg。体温 37.0 ℃。心拍数 112/分、整。血圧 80/44 mmHg。呼吸数 26/分。SpO₂ 98 %(リザーバー付マスク 10 L/分酸素投与下)。皮膚は四肢に冷汗と湿潤を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内は乾燥している。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は膨満しており、肝・脾を触知しない。腸雑音は減弱している。
検査所見:血液所見:赤血球 410 万、Hb 10.1 g/dL、Ht 40 %、白血球 10,300(好中球 75 %、好酸球 1 %、好塩基球 1 %、単球 6 %、リンパ球 17 %)、血小板 32万。血液生化学所見:総蛋白 7.2 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、総ビリルビン 0.9mg/dL、直接ビリルビン 0.2 mg/dL、AST 65 U/L、ALT 34 U/L、LD 177 U/L(基準 124~222)、ALP 55 U/L(基準 38~113)、γ-GT 32 U/L(基準 13~64)、アミラーゼ 130 U/L(基準 44~132)、CK 382 U/L(基準 59~248)、尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、尿酸 6.2 mg/dL、血糖 228 mg/dL、HbA1c 5.8 %(基準4.9~6.0)、Na 142 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 97 mEq/L。
この時点での適切な対応はどれか。 2 つ選べ。
a. 血小板輸血を行う。
b. 鎮静薬を静脈内投与する。
c. 乳酸リンゲル液を急速投与する。
d. 体位を逆 Trendelenburg 位にする。
e. 迅速簡易超音波検査〈FAST〉を行う。
その後、頭頸部単純 CT では異常を認めなかった。胸腹部造影 CT では脾臓損 傷、脾臓内および周囲の造影剤血管外漏出像、腹腔内遊離ガス及び腹腔内液体貯留を認めた。気管挿管を行い、緊急手術を予定した。
術前の対応で誤っているのはどれか。
a. 低体温にする。
b. 輸血を準備する。
c. 抗菌薬を投与する。
d. 血液凝固検査を行う。
e. 動脈血ガス分析を行う。
小腸、腸間膜および脾臓の損傷に対して小腸切除と脾臓摘出を行った。小腸は浮 腫が認められたが、閉腹は可能であった。ICU 入室後、心拍数 68/分、血圧 132/76 mmHg まで改善した。動脈血ガス分析(調節呼吸、F₁O₂ 0.3)は pH 7.40、PaCO₂35 Torr、PaO₂ 180 Torr、HCO₃¯Eq/L、BE -6 mEq/L であった。
この段階で腹部コンパートメント症候群を評価するために腹腔内圧をモニターする際、最も有用な測定部位はどれか。
a. 胸 腔
b. 食 道
c. 頭蓋内
d. 動脈内
e. 膀 胱