問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
a. α 遮断薬
b. ベラパミル
c. SGLT2 阻害薬
d. スルホニル尿素薬
e. アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
この患者は64歳の男性で、糖尿病と慢性心不全の病歴があり、心エコーで駆出率が42%と心機能低下が確認されている。また、浮腫、頸静脈怒張、BNPの上昇など、うっ血性心不全の徴候が見られる。予後改善のためには、心不全治療に加えて糖尿病管理が重要である。
この症例において、予後改善を期待できる薬剤としては c. SGLT2 阻害薬 が適している。
SGLT2阻害薬は、糖尿病の治療において血糖コントロールを改善するだけでなく、近年の研究で心不全患者の予後改善にも有効であることが示されている。特に、駆出率が低下した慢性心不全患者に対してSGLT2阻害薬を使用すると、心不全の悪化や心血管死のリスクを低減する効果が認められている。SGLT2阻害薬はこの患者のような糖尿病を伴う慢性心不全患者において有効な薬剤である。
他の選択肢については以下の通り説明する:
- **a. α遮断薬**:高血圧の治療に使用されることがあるが、慢性心不全に対する予後改善効果は示されていない。
- **b. ベラパミル**:カルシウム拮抗薬であり、心不全患者には慎重に使用されるべき薬剤である。特に駆出率が低下した心不全(HFrEF)には使用しない。
- **d. スルホニル尿素薬**:糖尿病の治療薬ではあるが、心不全患者には低血糖のリスクが高く、特に推奨されない。
- **e. アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)**:すでにACE阻害薬を内服しているため、追加の効果は期待できない。
したがって、SGLT2阻害薬の追加がこの患者の予後改善に最も効果的である。