問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)
a. 慢性膵炎
b. 膵仮性囊胞
c. 膵・胆管合流異常症
d. 被包化膵臓壊死〈WON〉
e. 膵管内乳頭粘液性腫瘍〈IPMN〉
この症例は、重症急性膵炎の治療後に発熱と腹痛が再度出現し、抗菌薬投与でも改善しないという経過をたどっています。造影CTを伴う情報や臨床経過から、最も考えられる診断は **d. 被包化膵臓壊死(Walled-off Necrosis, WON)** です。
**被包化膵臓壊死(WON)** は、重症急性膵炎後の合併症で、膵臓周囲の壊死した組織が液化し、それが時間をかけて線維性の壁で囲まれたものです。膵炎発症から数週間後に発生することが多く、CT画像で被包化された液体のコレクションが見られるのが特徴です。発熱や腹痛、CRPの上昇が見られるのもWONに一致する所見です。
他の選択肢について:
- **a. 慢性膵炎**:慢性膵炎は長期にわたる膵炎の反復により発生しますが、急性膵炎後の短期間での発熱や腹痛の再燃はWONの方が可能性が高いです。
- **b. 膵仮性囊胞**:膵仮性囊胞も膵炎後に見られますが、囊胞は壊死組織を含まず、通常は発熱や高度のCRP上昇を伴いません。
- **c. 膵・胆管合流異常症**:これは先天的な異常で、膵炎の既往に関連することはありますが、今回の症例には適合しません。
- **e. 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)**:膵管内に粘液を分泌する腫瘍ですが、急性膵炎後の短期間での発熱や腹痛の再燃とは関連しません。
したがって、この患者の最も適切な診断は **d. 被包化膵臓壊死(WON)** です。