68歳の女性。意識障害と右上下肢の麻痺のため救急車で搬入された。
現病歴:3年前から高血圧症と心房細動に対して降圧薬と抗凝固薬との内服治療を受けていた。夕方、夫との買い物の途中で右手に力が入らなくなり、右足の動きも悪くなった。帰宅後、玄関先に倒れ込んでしまい意識もはっきりしない様子であったため、夫が救急車を要請した。
既往歴:7歳時に急性糸球体腎炎で入院。
生活歴:喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。
家族歴:父親が高血圧症で治療歴あり。
現症:意識レベルは GCS9(E3V2M4)。身長 158 cm、体重 54 kg。体温 35.8℃。心拍数 68/分、不整。血圧 192/88 mmHg。呼吸数 10/分。SpO2 97 %(鼻カニューラ 4L/分 酸素投与下)。頸静脈の怒張を認めない。心音は心尖部を最強点とするⅡ/Ⅵの収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。右上下肢に弛緩性麻痺を認める。
検査所見:血液所見:赤血球 398 万、Hb 10.2 g/dL、Ht 34 %、白血球 8,800、血小板 22 万、PT-INR 2.1(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、AST 18 U/L、ALT 12 U/L、尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 1.2 mg/dL、Na138 mEq/L、K 4.8 Eq/L、Cl 109 mEq/L。頭部 CT で左被殻に広範な高吸収域を認める。
CT 撮影を終え処置室に戻ってきたところ、呼吸状態が悪化した。舌根沈下が強く、用手気道確保を行ったが SpO2 の改善がみられなかった。
この患者にまず行う気道管理として適切なのはどれか。
a. 経口気管挿管
b. 経鼻気管挿管
c. 輪状甲状靱帯切開
d. 経鼻エアウェイ挿入
e. ラリンジアルマスク挿入
CTで左被殻に高吸収域を認めており、脳出血の症例である。
呼吸不良の患者への対応。
その後の経過:薬物療法とリハビリテーションによって順調に回復した。この患者に抗凝固薬を再開すべきかどうかについて文献検索を行うため、患者の問題を以下のように PICO で定式化した。
Patient(対象患者):高血圧症と心房細動とを合併した脳出血の女性
Intervention(介入):抗凝固薬内服再開
Comparison(対照):抗凝固薬内服中止
Outcome(結果):【 ア 】
【 ア 】い適さない項目はどれか。
a. 出血の増加
b. 心房細動の改善
c. 生命予後の延長
d. 入院機会の減少
e. 脳梗塞発症率の低下
脳出血後患者に抗凝固療法を再開するとどうなるかということを問うている。
心房細動自体を治すわけではない。