73歳の女性。右殿部から膝の痛みを主訴に来院した。

現病歴:60 歳ごろから立ち上がる動作や長時間の立位や歩行をした際に右殿部から膝の痛みを自覚していた。2年前には右膝に右手を置いて歩行するようになったために自宅近くの整形外科診療所を受診し、エックス線写真で右股関節の変形を指摘されたが通院はしていなかった。3か月前から痛みが増悪して歩行がさらに困難になり、屋内の伝い歩きは可能なものの外出ができなくなったため受診した。既往歴:18年前から高血圧症のため自宅近くの内科診療所で内服治療中。同診療所で、慢性の便秘症に対し整腸薬と睡眠障害に対する睡眠薬とを処方されている。また眼科診療所で、軽度の白内障に対して点眼薬の処方を受けている。2か月前からは、右殿部から膝の痛みに対して市販の湿布薬貼付と鎮痛薬の内服とを続けている。

生活歴:夫、長男夫婦および孫2人との6人暮らし。兼業農家で長男夫婦は共働き。孫は短大生と高校生。3か月前まで患者が家事の多くを担当していた。

家族歴:特記すべきことはない。

現症:意識は清明。身長 156 cm、体重 53 kg。体温 36.3 ℃。脈拍 64/分、整。血圧 130/72 mmHg。呼吸数 14/分。SpO2 98 %(room air)。頸部リンパ節を触知しない。胸腹部に異常を認めない。右殿部から膝の痛みのために立ち上がる際に介助が必要で、独歩は不能である。

検査所見(外来受診時):尿所見:蛋白 (-) 、糖 (-) 、ケトン体 (-) 、潜血 (-)。血液所見:赤血球 390 万、Hb 12.0 g/dL、Ht 38 %、白血球 5,800、血小板 24 万。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、AST 15 U/L、ALT 17 U/L、LD 220 U/L (基準 176〜353)、ALP 153 U/L (基準 115〜359)、γ-GTP 28 U/L (基準 8〜50)、アミラーゼ 76 U/L (基準 37〜160)、CK 40 U/L (基準 30〜140)、尿素窒素 16 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、血 糖 84 mg/dL、Na 139 mEq/L、 K 4.1 mEq/L、Cl 109 mEq/L。CRP 0.2 mg/dL。


右殿部から膝の痛みの原因の鑑別に有用でない身体診察はどれか。

a. 肋骨脊柱角の叩打

b. 股関節の可動域

c. 鼠径部の触診

d. 大腿部の触診

e. 膝関節の触診

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その後の経過:外来で精査した結果、右股関節を人工関節に置き換える手術が予定された。入院時のシステムレビューで、夜間のトイレ歩行時に軽いふらつきを自覚していることが分かった。神経学的所見では、右下肢の筋力低下以外に、ふらつきの原因となる異常は認めなかった。

処方されている薬剤で、ふらつきの原因となる可能性があるのはどれか。3つ選べ。

a. 非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>

b. 降圧薬

c. 睡眠薬

d. 整腸薬

e. 点眼薬

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手術後のリハビリテーションの計画を立てる上で患者に確認すべきなのはどれ か。3つ選べ。

a. 患者が望む生活像

b. 使用している寝具

c. 予防接種歴

d. 玄関の構造

e. 学歴

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問題解説・システム開発 : 内科医 米澤昌紘(れく)